童貞

エリー.ファー

童貞

 何も持っていない。

 そんな人生ではない。

 すべてがある。

 そんな人生。

 伸びしろしかない。

 そんな人生。

 どうにでもなるように生きているそんな人生。

 童貞。

 愛されるようなものじゃない。

 でも、長く付き合う内に分かってくる本当の愛し方。

 童貞。

 どうにもならないかもしれない。

 でも、それがいい。

 自虐だって上手くやれば、皆から好かれるための大事なフック。

 童貞。

 寂しい時は、独りで過ごす。

 慣れ過ぎて寂しくない。

 童貞。

 みんな、パニックになり過ぎなのさ。

 自分で不幸になりにいってる。

 できれば、焦っているふりくらいが丁度いい。

 人生なんて若干舐められてるくらいが丁度いいんだ。

 なぁ、そうだろう。

 童貞。

 悪くない人生。

 そんなもんだって普通。

 何でもかんでもできるもんじゃないって。

 童貞だけど幸せな人なんて沢山いるし。

 童貞だけど色々な人から尊敬されてる人なんて沢山いる。

 気にし過ぎだって。

 処女も同じ。

 ただの気にし過ぎ。

 でも、確かに卒業はしたくなるよね。

 童貞。

 だって、恥ずかしいしね。

 分かる、すごく分かるよ。

 でも、いいじゃん童貞でも。

 童貞音頭とか作って踊ったら、バズると思うよ。

 結構、マジな話なんだけどさ。

 ねぇ、使えるものは全部使ってみればいいじゃない。

 そうだろう。

 童貞。

 ああせい、こうせい、なんて言ってるけど。

 大事なのはスタンスなんですよ。

 そうでしょう。

 童貞。

 必死に生きたって最後は死ぬだけ。

 だったら自信を持って生きればいいじゃない。

 童貞。

 応援する気はさらさらないけど。

 でも。

 応援されなくたって頑張れるでしょ。

 童貞。

 もしも、ありとあらゆるものが消えて。

 自分の生き方だけに価値が生まれるとしたら。

 童貞って、かなり高価だと思うよ。

 本当さ。

 嘘じゃない。

 だって、一度失ったら戻れないからね。

 童貞であることを誇りに思うべきだ。

 本当に価値があるかは別の話さ。

 そうじゃなくて、高価なものだと思うべきだって話さ。

 もっと言うなら、価値を高くするように振舞うべきだと思う。

 童貞であることよりも、人間であることをしっかり認識していれば問題なんて生まれないよ。

 本当さ。

 嘘じゃない。

 童貞か童貞じゃないか、なんて些末さ。

 考えるような問題じゃないよ。

 もっと意味のあることで悩もう。

 それができないなら、何もかも忘れて寝よう。

 それでいい。

 そうやって生きていくのが一番いいよ。



「結局、童貞って良くないものなんですかね」

「人によるとしかいいようがない」

「解釈ですか」

「そう、すべては解釈だ」

「でも、本人にとってはかなり大きな問題でしょうから、解釈という言葉だけで精神的に避けきれるものではないように思います」

「そう、でも。避けるしかない」

「大変でしょうね」

「さぁな。童貞以外の魅力を探すしかないだろう。仮に童貞を卒業した所、魅力がないなら馬鹿にされるだけだ」

「童貞だけが足枷ではない、ということですね」

「そう、本当はもっと多くの問題が足元に絡みついている。実は、複雑だ。しかし、分析ができないから、何か一つだけ取り出して問題視する。これは、問題解決のできない人の特徴と言える」

「なるほど」

「気にしすぎというのは事実だがね」

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