第17話

 アイシアと僕は7日間引きこもった。


「そろそろ外に出ようか、あ、外では言う事を聞かなくて大丈夫だからね」

「分かってるわ、外では普通にする」


「食べ物の補充が必要だね」

「ゴーレムを出すわ」

「僕も荷物を持つよ」

「お願いね、腰が痛くて」


「うん、ゴーレムに乗っていいよ、回復ポーションも揃えよう」

「それよりも、私だけじゃ、無理よ」

「うん、体を壊しちゃうよね?」

「……凄すぎるのよ」


 ファニーとレティ、そしてユニコーン騎士団の女性たちも歩いてきた。


「「おはようございます」」


「おはよう」

「うん、おはよう」

「王子、私の引っ越しの件を話し合いましょう」

「でしたらお茶会をしたいですわ」

「ファニーはもう忙しくないの?」


「はい、皆さんが手伝ってくれますから」

「今から買い物に行きたくてね」


「「買い物なら私達が後で運びます!」」


 ユニコーン騎士団の言葉が決め手になりレティの屋敷に向かった。

 お菓子を食べながらファニーが引っ越しをする段取りを整えるとユニコーンで荷物を運んでくれることになった。

 ファニーがアイシアをじっと見る。


「それにしましても、アイシアのお肌がプルプルですわね」

「え? う、うん、そうね、毎日、温泉とか? 入ってるから」

「温泉は王子と一緒に入っているんですか?」


「そ、そうね、そうよ」

「はあ、はあ、そうですか、引っ越しが終わったら私が王子を洗いますね」

「そう、ね、うん、お願い」


 アイシアの目が泳ぐ。


「ファニーさんの荷物を運びますよ」


 ユニコーン騎士団の女性が空になった紅茶を取り換えながら言った。


「私の荷物はトランク1つと袋2つだけですから大丈夫ですよ」

「そうですか、あ、アイシアさんの買い物をユニコーンで運びますよ、一緒にユニコーンで飛んですぐに終わらせちゃいましょう」


「わ、私は、大丈夫よ」


 急にアイシアが焦りだした。


「……ユニコーンに乗った方が早いですよ」

「い、いいわよ」

「……遠慮なさらずに」


「……やっぱり、ユニコーンに乗ろうとするとナニかあるんですか?」

「失礼はいけませんわ。この話はおしまいですわよ」

「……分かりました」

「そろそろお引越しをしましょう」


 みんなで立ち上がり外に出た。

 するとユニコーンに乗った女性が近くに降り立った。


「王子は離れてください」

「いいけど、うん、分かった」

「ちょ、ちょっと」


 アイシアが焦る。


 ユニコーンがアイシアに近づいた瞬間にユニコーンが暴れる。


「ヒヒーン! ヒヒーン!」

「落ち着いて、落ち着いて」


 ユニコーン騎士団の全員がアイシアを見た。


「「やっぱり」」

「失礼はいけませんわ」

「でも、アイシアさんの相手がいるんですよ、気になるじゃないですか」


 アイシアの顔が真っ赤になって手で顔を仰いだ。


「気にはなりますが、失礼ですわ」


 ファニーがアイシアの手を両手で優しく包みこむ。

 そして満面の笑顔で言った。

 まるで懺悔を聞く聖母のようだ。


「アイシア、相手は王子ですか? それともそれ以外ですか? それだけ答えましょう」

「ファニー、失礼ですわよ」

「……よ」


「聞こえませんよ、神の前で真実を告白するのです」

「ファニー、失礼ですわ」

「あ、相手は、マグ、ナムよ」


「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」

「はあ、はあ、はあ、7日間も、王子と2人きりで、一緒に温泉に入って、一緒の屋根の下で寝て、いつですか? はあ、はあ、いつ事が行われたのですか!? どこでシタのですか!?」


「ファニー、鼻血鼻血」

「もう、マグナム、助けてよ」

「隠しても表情でバレるし、それに恥ずかしがるアイシアが可愛かったから。ごめんね」


 アイシアが声をあげて恥ずかしがった。


「は、はあああああああああああああああああああああああああああああああ!」

「はあ、はあ、たった、7日間で、ユニコーンに乗れない状況に、アイシアのその顔、はあ、はあ」

「ファニー、鼻血を拭こう」


「アイシア、その、失礼をしましたわ。とんだ恥をかかせてしまいましたわね」

「やめてやめてやめてやめて、それが一番恥ずかしいわ」

「「おめでとうございます!」」


「やめるのですわ!」


 こうして僕とアイシアの関係はすぐにみんなにバレた。




 その後、アイシアがユニコーンに乗れなくなった事実は1日で村に広まった。

 この村はいい所だけどすぐに噂が広がるな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る