第14話 学校のパワースポット(4)
「むむむむむっ! 生意気な子! じゃあ、わたしの力で好きな子を告白しちゃいなさいっ!」
その時だ、家保くんの手がどんどんと長くなり、ピクシーを捕まえてしまった。これには、わたしだけでなく神城さんも驚いていた。
「俺のおばあちゃんのおばあちゃんのずっとおばあちゃんにはろくろっ首という首がどこまでも伸びる妖怪がいるんだ。俺が伸ばせるのは首だけでなく全身なんだけれどね」
家保くんのご先祖様が妖怪だなんてびっくり。というか、妖怪ならそのおばあちゃんはきっとまだ生きているだろうな。
「俺の家は妖怪のエリートでもあるんだよ。強い妖怪の子どもって奴だね。『元』妖怪王とも仲がいいのはそういう理由もある」
剣士くんは元妖怪王と呼ばれているや。ふふふっ。偉そうにしているけれど、今は妖怪だけでなく、洋怪もいるからね。
「そして、妖怪の血が流れているのは俺だけでなく、君もみたいだね。羽瀬川さん」
「えええっ! わ、わたしもなの!?」
「すごく薄いけど、確かに妖怪の血が流れているよ。でなければ、ピクシーが見えるはずがない」
わたしの家柄は家保くんと違って平凡なものだと思うのだけれどなぁ。
「ど、どういうことなの? ふたりとも人間じゃないの?」
「あ、神城さん。たまたまだけれど、君も見てしまったね。ふふふっ、もう普通の日常には戻れないよ」
「い、いやぁっ! た、助けてっ、誰か!」
慌てて教室へと走っていく神城さん。
「なんだか、可哀想なことをしちゃったかな。でも、しょうがないね。残念ながら彼女の身柄は徳川家で預からせてもらわないと……なに、酷いことはしやしないよ。幸いまだ子どもだから新しい出来事や不思議な出来事には早く慣れるだろうし」
神城さんのことは確かに少し可哀想だ。妖怪に出会ってから太らされたり、心の中を暴露されたりろくな目にあっていない。
「でも、わたし、妖怪なんて剣士くんと出会うまで見たことなかったよ」
「剣士と出会ったことがきっかけだったんだと思うよ。薄いけれど君も妖怪の力が流れている。何か妖術や、普通の人と違った力があると思う。それが何かはわからないけれどね」
「わたしに妖怪の力があるって言われてもな、どんな力なんだろう。妖怪のこと別に詳しくないからな」
「なら俺が色々教えてやるよ。妖怪博士とも呼ばれているんだぜ」
そう言いながら、捕まえたピクシーを放してやった。
「ほら、もう悪さするんじゃねーぞ。俺が悪いやつだったら、妖怪コレクターに売られてたかもしれないんだからな」
だが、捕まえられたピクシーはベーっと舌を出して家保くんをバカにしたような感じだった。
「この木に住んでいるのも飽きてきたし、もっと楽しいことがしたいな」
「そうだ、なら、わたしと一緒にくる?」
わたしの提案にピクシーは驚いている様子だった。
「なにか企んでいたら、あなたの本音をさらけだしちゃうからね!」
「なんにも企んでないよ。今、家に福の神っていう妖怪を飼っているし、わたしもっと妖怪のことを勉強してもいいかなって思っただけ」
「勉強してどうするの?」
「あははっ、わたしは先のこととか何にも考えてないんだよね。お兄ちゃんみたいにやりたいこともないしさ。ただ、なんとなくだけれど……妖怪との出会いに運命を感じたの。あなたたちのことをもっと知りたくなったのかな」
わたしの言葉にピクシーは呆れていた。
「のん気な人間ね。妖怪の中には人間を食べちゃうような怖いやつもいるんだよ。まあ、気持ちに嘘はなさそうだし、わたしがあなたの先生になってあげる」
「先生?」
「あなたがどんな妖術を使えるかしらないけれど、あなたの力を引き出してあげるわ。その代わり、あなたはわたしをもっともっと真実を暴露しがいのある場所につれていきなさいよね」
「うん、わかった!」
取引成立だ。それにしても、妖怪の友達はどんどん増えるのに、人間の友達は増えないな、考えていて悲しくなるけど。
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