第9話 家に取り憑いた妖怪(5)

「えーと、どこから話せばいいのかな。今はね、飛行機が空を飛んでいるし、人工衛星は宇宙を飛んでいるの。それでね、ぐろーばるか?っていって、海外が日本と近くなったんだよ」

 剣士くんはわたしのつたない説明でわかったのかわからないが、目を閉じて何かを考えているようだった。

「まるでわからない」

 そ、そりゃあ、そうだろうね。先生とかが説明することだし。

「あ、わかったこともある。海の向こうに他の国があることは知っていた。どうやらそこから西洋の妖怪。洋怪が現れたみたいだな」

「そうだね、わたしも学校で英語を習っているし」

「ほう、いおりは海外の言葉がしゃべれるのか! すごいな!」

「え、えへへ、それほどでもないよ。海外の洋怪が現れたら通訳してあげる!」

「英語なら俺も得意だよ! 英検3級を持ってる!」

「さすがすばる様でありんす。ところで、この貧乏神はどうしんしょう?」

「わたしは我が家に貧乏神がいるなんて嫌だよ」

 わたしが学校でいじめられたり、家にお金がないのとか、兄が不登校になったのも、もしかしたら貧乏神のせいかもしれない。

「まあ、一般的な人間の反応はそうだろうな。貧乏神は災いを呼ぶし、人間は病気や怪我をしやすくなる。他にもお金が貯まらなくなる……だが……」

「だが?」

「妖怪王は妖怪を進化させることができるのだ。まあ、子分をパワーアップさせるようなものだな。これは妖怪王の強大な妖力がなくてはできない」

「ふーん、貧乏神が進化するとどうなるの?」

「福の神になる」

「なにそれ! すごいじゃん! さすが妖怪王ね! 福の神ならぜひうちにいてほしいっ!」

「だ、そうだ。貧乏神よ。聞いていたか? 降参して僕の子分になるなら助けてやろう。でなければ何百年も氷漬けのままだ」

 凍った貧乏神は氷の中でなんとか声をしぼりだす。

「わ、わかったよ。子分になるから助けてくれ」

 雪姫ちゃんが手をかざすと氷が溶けて、貧乏神が水浸しで出てきた。

「ふう、助かった」

「よし、ならば僕の子分になるがいい。今日からお前は福の神だ」

 剣士くんが指を鳴らすと貧乏神の体が光って、毛づやの良い白猫になった。尻尾は二股(ふたまた)になっていて、やはり普通の猫とは違う品の良さみたいなものがある。さすが福の神だ。

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