条件探し

統一モンスターに敗北してから一週間弱。


俺は仕事で少しサボってゲームをしていたツケがきて、これまでゲームはおろか、VRそのものすら仕事用空間にしか入らずに寝る生活が続いていたところ、

黒音先生の催促によってひと段落ついたことで有給を取り俺は…


「…なぁーんでメンテナンスが重なるかなぁ…」


視界の端から連絡ツールの通知が出てくる。


小さくはあるが一応少しだけ読めるその通知を見て、黒音先生の謝罪であることが分かる。


仕方ないとは思いつつも、こう間が悪いと少しイライラもする。


それにしても今回の更新は告知無しだったが、それほど緊急なのだろうか…


補填あるといいなぁ…


そんなことを思いながら俺はソファに寄りかかり、ため息をつく。


「あっ!どうも!出てきちゃいました!」


「うわっ、なんだお前。メンテ中だろお前」


混乱して日本語としておかしいような感じのセリフを行ってしまったことを内心少し反省し、鎧の頭を一発はたく。


「痛っ!」


「お前鎧なんだから痛覚通ってないだろうが」


「まぁそうなんですけど…乗ってくださいよぉー!」


「知るか」


バカなことを言う鎧をもう一度はたき、俺は問いかける。


「で、何の用だ?」


「遊びに来ただけで…いや痛い痛い!冗談ですよ冗談!」


「うるさい。さっさと言わんと今度は折るぞ」


痛いとかほざき続ける鎧もついには真面目な表情…まぁ表情が見えるわけではないのであくまで雰囲気の話だが。


「えーっとですね…今日はあの統一モンスターの遭遇条件を考えようって話なんですが…」


「ああそれか。それはもう予想できてる。今日確かめる予定だったんだがな」


「なんでわかってるんですか⁉︎」


驚き声を無視して俺は説明を始める。


条件はおそらく水。


抜けてから考えれば、水を使えば使うほど魚系モンスターが増えていたように感じる。


そして出現したのは付与した水を振り撒いているタイミング。


ここまでわかればわからないやつはいないだろう。


つまり、あの統一モンスターの出現条件は水である。QED証明完了。


「ほへー…じゃぁそこまで自力で辿り着いたあなたにプレゼント!今回のアップデート…結構でかいマップが追加されますよ…!」


急に人が変わったようなハイテンションでそう告げてくる鎧。


「あ?誰だお前?」


「私ですか?ラファエラですよラファエラ!メンテ中に勝手に抜け出した彼女を監視してたんですが…面白かったのでこのくらいの情報あげますよ!」


「こんなのより合ってるかどうかの答え合わせの方が欲しいんだが…」


「それは無理ですねぇー!」


小さく舌打ちして俺は考える。


ラファエラがこんなに言ってくるってことはこれからはゲーム外でもこう言うのは気をつけた方がいい…か。


「まぁいい。鎧にもどれ。話が進まん」


「はーい。じゃ、また機会があればー!」


その言葉の後数秒間をおいて鎧は声を上げる。


「はっ!私今寝てました!?」


その問いを無視して俺は考えを巡らせる。


広大なマップ…今のマップが端から端までリアルで一日弱かかるとかいうイカれた広さだ。同じサイズとまではいかなくても、半日サイズは覚悟しておくべき…か…?


考えていても始まらない。


俺は、メンテ終了の通知が来た瞬間、ログイン処理を実行するのだった。

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