#7 2度目の死
ボスラッシュを攻略するための協力者探しは一旦、これ以上は難しいと判断して切り上げる。
仲間探しもしていたいが、それをするためにはまずは俺たちの力を付けた方がいいと思ったからだ。それに実力があれば、協力者になってくれる可能性も上がるだろうしな。
「なぁ、多々良君と初霜さん。これから俺はボスラッシュにもう一度挑むんだが、どうする?一緒に戦ってもいい。でも、その場合脱落してしまった二人のように魂を壊されるかもしれない。」
「その点は承知です。それを踏まえたうえであなたに協力するのです。」
初霜さんはきりっとした表情で、そう言い切った。
「神鶴君も、僕たちのことを心配してくれてるのは分かる。でもそれ以上に僕たち血もここから出たいと思う気持ちは強いんだ。だから、その脱落やそれに伴う苦痛は初霜さんのように僕らは理解したうえで、神鶴君と一緒に戦いたいと言ったんだ。」
多々良君からもそう言われては仕方ないな。
「......分かった。ただ一つ注意点がある、それは絶対に死ぬということ。これは変えられない結果で受け入れるしかない。ただ、生き返ってもこれる。」
自分で言っていても、何を言っているのかわからないがそうなんだ。
糸嶺と白龍川が脱落してしまった以上、必ず生き返るという保証が崩されたのだから。
「ん、分かったわ。」
「肝に銘じておくよ。」
二人とも目に宿る意志は固い。
きっと死を恐れていなわけではない、それは二人とも手の震えや瞳孔の瞬きから分かる。
ならその思いを無駄にしないように、あの魔王をいつか打ち倒すために戦い続けるだけだ。
そうして、もう一度俺は準備を整えて、ボスラッシュへと挑むのだった。
「初霜さん、多々良君、ウィンドウが出てきたらYESを押してくれ。そうすることで、ボスラッシュに挑むことができる。」
「ただ、今回は俺が先に行って死んで戻ってきてから、YESを押してきてくれ。」
「それって、つまり避けられないような攻撃が来るってこと?」
まぁそうっちゃそうなんだけど、何と言ったらいいかな。
「プライドバトルみたいなものかな?」
多々良は共感してくれるか。
「そうかもなぁ。そう思っておいてくれ。」
2度目の戦闘、2人のためにも1ダメージでもいいから与えたい。
「じゃあ、行ってくる。」
そうして俺はボスラッシュの第1層に転送される。
転送されれば、また暗い朽ちた王城にいる。
そこにはやはり、鎮座している魔王テネブリスの姿がある。
「挑戦しに来たぞ、テネブリス!」
テネブリスから放たれる強烈な殺気に耐えながらもそう吠える。
「驕るなよ、人間。貴様には特別な力などないのだから。」
そんなの知ってるよ。
「それでも、俺はお前を倒す!二人のために!」
背負っていた弓を構え、テネブリス目掛けて矢を放つ。
「パワーショット!」
最大限まで振り絞られた弦が解き放たれて、矢は力強く飛んでいく。
「その程度の攻撃では効かんぞ?」
そう言った直後にテネブリスのバリアに触れた矢は弾かれるようにして消える。
想定しているんだよそんなの。
俺の攻撃が終わったのを見て、テネブリスが手をかざす。
来る!
俺の足元に闇が広がっていく。
その攻撃を回避するために前に前に駆け抜ける。
駆ける俺を追撃するように光を放ち追い込んでいく、テネブリス。
光り輝く弾丸はテネブリスに近づく俺を阻むように飛んでくる。
一発、二発、三発と俺の頬や肩を掠めていく。
少しでもずれていたらと思うとゾッとする。
間違いなく、顔も腕もいかれていたはずだから。
だが、その光の弾丸たちはそれだけではない。
テネブリスの頭上に浮かぶ光の数は30を超えている。
さらに言えば、俺はテネブリスに近づいているため前方から飛んでくる光と衝突する時間が早くなるということ。
それは回避が難しくなるというとになる。
「持ってくれよ、俺の足!」
既にかなりの距離を全力で疾走している。
肺に入っていく空気は焼けるように熱い。
血の味が既に口の中を支配している。
さぁ来るぞ、俺はただ避けるだけでいい。
「死ね、人間。」
前方からマシンガンのように放たれる光。
それを回避するために、スキルを使う。
「サイドステップ!」
糸嶺から貰ったスキル、サイドステップで左右に回避して光の弾丸を避けていく。
地面に着弾した光はその場を焦がす。
それでも全ては躱しきれずに、2発当たってしまう。
「ぐぅ......まだだ!まだいける!」
当たった左腕と右肩その部分が焼け焦げて、苦悶を浮かべながらもテネブリスに向かっていく。
「ふん、雑魚が。我が貴様の相手をすると思うたか?とんだバカもいたものだ。」
その瞬間、周りの闇が濃くなった。
いやそれは影だった。
影から出でるのは翼を持った怪物。
その怪物は俺の横っ腹を即座に切り裂いていった。
飛び散る鮮血。
初めて見るような量の血が俺から噴き出していた。
「これっ......まずい、やつ......」
不意をつくように切られた俺は、態勢を崩して転げる。
隙だらけの俺をその影の怪物が見逃しくれるわけもなく。
なすすべのない俺の頭を刈り取っていった。
転がる俺の頭、3秒間の視界で得た情報は蔑むようなテネブリスの表情だけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます