和解

 春の日差しの中、サッカー部の練習場は活気に満ちていたが、その中で輝は重要な話をするためにチームメイトを集めた。彼らは一列に並び、輝の言葉に耳を傾けていた。


 輝は一歩前に出て、深呼吸をした。彼の表情は真剣そのもので、彼の声は少し震えていた。

「みんな、この前のロッカールームでのこと、本当にごめん。スカウトの話を隠してしまって...」

彼は一瞬言葉を失い、部員たちの顔を一人ひとり見た。それぞれの表情は緊張と期待で張り詰めていた。


「プロからの関心は、僕にとっても予期せぬことだった。でも、それを言い出せずにいたのは、チームに迷惑をかけるのが怖かったからだ。でもそれが、かえってみんなを傷つけることになってしまった。」


 部員の中から、静かな声が上がった。

「輝、それでもお前はキャプテンだ。お前が悩んでいること、今はわかる。お前がプロの舞台に立つチャンスを手に入れたことは、俺たちにとっても誇りだ。」


 その言葉に、他の部員も頷き始めた。空気が変わり、以前の緊張が和らぐのを感じながら、輝はさらに続けた。「ありがとう。これからも全力でチームを引っ張っていく。次の試合に向けて、一緒に頑張ろう。俺たちの目標は変わらない。俺たちでチャンピオンになるんだ。」


 部員たちが一斉に立ち上がり、輝の周りに集まった。彼らは輝の肩をたたき、励ましの言葉を交わした。団結の輪が新たに形成され、チーム全体の雰囲気は一変して、次の試合に向けての決意が固まっていった。輝は和解できるか不安だったが、やっと緊張の糸が切れて満面の笑みを見せた。


 練習が再開されると、輝はチームの先頭に立ち、練習メニューを率先してこなし始めた。彼の動きは以前よりも力強く、部員たちもその姿に触発されて一層の努力を重ねた。サッカー部の練習場からは、笑い声が再び聞こえ始め、それは過去のわだかまりを洗い流すかのようだった。

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