輝サイド2章

メッセージ

 次の日の朝、輝はいつも通り学校に向かうが、頭の片隅には昨日受け取った謎のメッセージがちらついている。授業をこなしつつも、心は裏庭への呼び出しのことでいっぱいだった。少し躊躇しながらも、彼は約束の場所である学校の裏庭に向かう。


 裏庭に到着すると、輝はそこに先生と見知らぬ人物が待っているのを発見する。その人物は輝のサッカーの才能に目を付けたプロスカウトで、彼にプロにならないかと告げる。これは輝にとって夢のようなチャンスであるが、受け入れるということは家族や白玖、宇都美と離れ離れになることを意味する。


 輝はこの突然の提案に戸惑い、何を答えていいかわからない。スカウトは輝に猶予を与え、じっくり考えるように促す。


「私は君の才能に惚れている。だが、上はそうは思っていないらしい。今回の春季大会の結果次第で上はすぐにでも君をチームに受け入れてくれると言っている。私たちに君の価値を証明してくれ。」


 輝は先生を見た。先生の目には支持と激励の意味が込められていた。


「水野君、チャンスはいつでもそこにあるわけではない。これは君が成長し、さらに大きな舞台でプレイできる絶好の機会だ。家族や友人と少し離れるのは辛いかもしれないが、君が持つ才能を考えれば、周りの人々も理解してくれるはずだ」

と先生が励ます。


 輝は何度か頷きながらも、心の中はまだ答えを見つけられずにいた。スカウトと先生の言葉が背中を押す一方で、彼の心は未だに白玖や宇都美、家族との時間を想い、その重さに押し潰されそうになる。


「ありがとうございます。考えさせてください。」

と輝は静かに言い、その場を後にする。

彼の背中には若きアスリート特有の重圧が見え隠れしていたが、同時に未来への一歩を踏み出す勇気も感じられた。裏庭を後にする彼の足取りは、一歩一歩が重いが、それでいて確かな意志を感じさせるものだった。

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