異世界で一番雑なポーションの作り方
森山沼島
Ⅰ 転死
第1話 異世界転生じゃないよ、転死だよ
「いや? だから異世界転生じゃないよ、
さもあっけらかんとそう言ってのけちゃうんだから堪らない。
この謎の未確認人型発光物体がコノヤロー。
何せ罪もないこの俺を殺しやがった張本人でいらっしゃる。
いや、正確には俺の肉体は生死の過程すらすっ飛ばして、消滅してしまい原子分解以上の惨状になってしまったらしいんだよね。
俺の脳味噌のキャパシティなぞとうに超えてしまったが、要約すれば世界に留まる事ができるレベルの存在ではなくなって……まあ、結果的に死んだのと同じなんじゃない? ってことらしいよ。
一言だけ言わせて欲しい。
…ふざけてんのか?
いや、俺の理解が到底及ぶべくもない。
何せ相手はいわゆる“神”だ。
本人の言う通りだった場合、比喩でもなくだ。
「ん~…あっ! 万能の神ユピテル! 僕ってばその遠い親戚なんだぜぇ~?」
その自称神野郎がシルエット姿ながらに憎たらしい顔でニヤニヤしてるのが何故か判るんだが?
――だが、知らん。
雷とかが主に得意? てか神様にも属性とかってあるの? ゲームじゃあるまいしさあ。
「え…ガチで知らないの? まあ、仕方ないか。この世界では
まだ、光る人型が妙に人間臭い仕草でブツブツと言っているが、俺が何故こんな状況になってしまっているかの説明をすることにする。
俺はどこにでもいる馬鹿な大学生だった(※肉体消滅済み)。
齢は二十歳で、暇を持て余したサークル仲間(但し、女子誘えず。哀しみ)で深夜の廃墟探索を敢行したわけだ。
場所は郊外の割と大きな廃病院で、潰れる前に院長だか理事長だか偉い連中がヤバイ宗教にハマって入院患者を生贄にしてとかトンデモナイ噂があったりするとこだったわけで…。
廃墟内を回って1時間とチョイ。
特に何も目ぼしいものも見つからず、もう帰ろうと誰かが言ったタイミングで奥から声が聞こえた。
流石にその時は俺らも身構えたが……耳を澄ませばどうにも俺らと同じくらい齢の連中が楽し気にだべって騒いでいるような感じで全くホラー感ゼロ。
「何だ、俺らよりも先に先客が居たのか」と安堵した俺らは何故か引き返さずに声の方に行ってしまった。
引き返してさっさと帰れば良かったんだ。
言ったろ? 馬鹿な大学生だってな。
とある講堂っぽい広い部屋の中を覗き込んだ瞬間――気付けば、
どうにも神と下等生物(失礼だろ、他の神に訴えるぞ)じゃ
…例えるならドア開けたらゼロ距離で太陽があった的な?
そりゃGOZIRAも速攻で蒸発だわ。
「集まってた僕らも不注意だった。けど、君らも悪いだろう? 君ら、立派な不法侵入者だし、ここは歴とした――神殿なんだ。…君達が触れてしまったのは神の領域だったわけさ」
神殿とか…意外と噂も馬鹿にならないものかもしれん。
何でもこの自称神含め他の神とやらは普段、地球じゃない…正確には異なる次元の…何ていうんだっけ?
「もしかして異世界?」
…そうそれ。ちょっとまた混乱してた。
異世界の神々をしてるらしいが、時折、同級生(神にも義務教育が?)同士で密かに集まって(サボりか?)宴会を催しているらしい。
うっかり、その場に鉢合わせてしまった俺達にはドエライ迷惑な話でしかない。
結果、件の転死してしまった俺達はサボり神共がそれぞれ引き取って自身の世界で新しい肉体を与えてくれることになった。
いや、それを世に言う異世界転生(ちょいと変則的だが)というのでは?
「そりゃあラノベの読み過ぎだよ君? 転生ってのはそんな簡単な作業じゃないし、一柱の神だけでやるには手に余るんだ」
最初は単純に生き返らせてくれよと頼んだ。
しかし、何でも他所の世界の神の手によって魂に還された者(良いように言ってるけど、処したってことだよね?)はその神が責任を持つことになっているらしい。
俺達は縁日でポイで掬われる金魚か亀か。
いや、コイツ等にとってはそれ以下か。
「おいおい。僕ら神にだって罪悪感くらいあるんだぜ? 君は別に救いようもない極悪人ってわけじゃなかったし。…そこで、ちょっとした
何でも、本来の異世界転生のセオリーだとちゃんと当人の精神的苦痛を配慮して記憶の全消去は基本。
それと心なしか期待していたチートスキルも貰えないらしい。
勿論、世界にはチート級にヤヴァイ奴らもいるが神の知らぬ所で勝手に生まれているとの事で、殆どの神は無干渉または無関心なんだそう。
だが、ここで例外的な申し出――
こればかりは匙加減が必要だろう。
何故ならくれるかどうかはこのチャラ神次第だ。
流石に無一文スタートは困るから当面の生活費くらい頼みたいところだが、そもそも神様って通貨の概念無さそう…。
逆に大金財貨に黄金を渡された場合、イキナリ盗賊山賊とエンカウントして出戻ってくる可能性も十分にあり得る。
何せ異世界、皆大好きナーロッパ! 剣と魔法と封建社会と金!暴力!S●X!が当然の様にまかり通ってしまうかもしれないちょっとした無法世紀末救世主伝説な世界だったりするかもだ。
……スマン。後半はちょっと自分の偏見が入った事を詫びる。
なら、ちょっと強い武器や防具か?
俺は何処に出しても恥ずかしヘタレ童貞ぞ?
そもそもモンスターと戦うことなぞ御免被る次第にて。
冒険者とか戦闘系は無理ゲー…う~ん。
――その時、俺はふと閃いた。
結局、湧いて出たそのアイデア以外に良いものは考え付かず、まあダメもとで聞いてみた。
「…ふう~ん。もしかして、
…へ、へえー。神様もSteelでゲーム買ったりするんだな。
いや、もう何が起こってもそう驚く気すらないが。
「――いいよ! 丁度良さ気なモノを持ってるから選別に君にあげるよ」
言ってみるもんだな!?
まさか、こんなふざけた要望が通るとは思わなかったわ…。
「それにしても、あのゲームもその類だが……君らは滑稽だな? せめてゲームの中でくらい働くのを止めればいいのにさ。実に愛らしく…実に不幸な下等生物だよ。いや、そうデザインした僕らの
最初から最後まで不快で腹の立つ奴だったが、俺が新しい世界…異世界へと送られる間際にそう零した言葉と僅かだが翳りの表情を浮かべたような気がしたのが俺の心に未だ強く残っている。
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