第2738話 王の仕事は……
概念が結集していく。言葉にならない想いを形に変えて、『届け』と叫びながら、センは、自分の全部をゼノリカにささげる。
無意識の中で、
ゼノリカの面々は、
『自分達を包み込んでいる神の輝き』に酔いしれる。
至高の至福。
『彼・彼女たちの魂魄を構成している粒子』の一つ一つが満たされていくのを感じる。
質量を取り戻していく。
感情が暴走。
魂魄が輝く。
――その全部が一つになって、
ゼノリカはよみがえる。
―――――――※※―――――――
完全なる死を迎えた命が、
コスモゾーンから回収されて、
元の器に注がれていく。
その過程を経るたびに、
『センエースの生命力』は削られている。
その事実を、ゼノリカの面々は、無意識の中で理解していた。
自分達は、『この上なく尊い王』を『喰らう』ことで生かされている。
その理解によって、
『至高の至福』が『許しがたい大罪』となって、
彼・彼女らの心を蝕んでいく。
――おやめください――
――我々なんぞよりも、あなた様自身を優先させていただきたい――
そんな懇願がセンの中心に注がれていく。
だが、知った事ではなかった。
センは、彼・彼女らの想いを完全にシカトする。
――黙って、喰らい尽くせ――
――王の仕事はふんぞり返ることじゃない――
――責任を取ることだ――
『センエースの献身』の『重さ』が、
ゼノリカの心の中心に注がれていく。
センエースを止めることはできない。
無意識の中で、『ソレ』を深く理解したゼノリカの面々は、
――あなた様を、失いたくない――
全員の想いが一致した。
自分たちは死んでもいいから、
センエースには生きていてほしい。
そんな願いが一つになって、
グツグツと煮立って、
重なり合って、
そして、
――我々の命、その全てをささげます――
センエースからもらった命を、
そのまま、そっくり、センエースに返そうとするゼノリカの面々。
その行動に対し、
センは『アホを見るような渋い顔』をして、
――いや、あの……返されても困るんだよ――
――お前らに渡した命を、すぐ返されるって――
――これ、俺、なにしてんだよ――
――なんの意味もない1ターンじゃねぇか――
――ウムルという『やべぇ敵』を前にして――
――なんで、俺ら、束になって『事実上のパス』してんだよ――
センは、自身が『この世でもっとも愚かだ』と認識している、
『いやいや』『いやいやいや』の無限応酬が始まろうとしているのを感じて、
――お前らの意見なんか知らん――
――俺は王だ――
――責任が重い代わりに――
――絶対の命令権を持つ――
――お前らの望みは全部却下――
――俺の命を喰らい、甦(よみがえ)れ――
――以上――
――理不尽? 当たり前だ。王ってのは、そういうもの――
センは、『自分がささげた命』を『秒でクーリングオフしようとしてくるゼノリカの面々』に対し、『絶対の命令』を押し付ける。
センは、『強制力』を限界まで強化して、
ゼノリカに、自分の命を注ぎ込もうとする。
言葉とノリだけは、少し軽めのセン。
けれど、やっていることは、すべて、
胃もたれで吐き気がするほど重たいハイカロリー。
――ああ……命の王よ――
ゼノリカの面々は、さらなる恍惚に包まれていた。
『センエースの覚悟』に触れるたび、
その想いの深さに眩暈(めまい)がしてくる。
クラクラと混乱しそうになるほどの愉悦に包まれる。
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