第1640話 世界のコトワリ。


「うっせぇ、屁理屈クソ野郎。そんなんだから、お前は一生童貞なんだ」


「え、俺、一生童貞なの?」


「あたりまえだろ、世の中を、なめんなよ」


「1ミリもナメてねぇよ。むしろ、この世の誰よりも頑張って生きているっつぅの」


「お前ごときが、『頑張っているアピール』をするなど、片腹いたい! 本物の努力の前では、お前のやってきたことなど、ハナクソに等しい」


「言っておくが、俺は、生まれてこのかた、ずーっと、朝から晩まで必死になって努力を続けてきたんだが?」


「たかが『6年ちょっと』を積んだ程度で威張るな」


 ピシャリと言い切ってから、


「最低でも、200億年くらいは頑張らないと、本当に努力したとは言わないんだよ」


「努力のハードル、高ぇな、おい」


 と、ゲンが、

 『ボーレの支離滅裂な発言』に心底辟易したところで、

 ボーレが、


「さてと……それじゃあ、あの生意気そうなツラした後輩に『世界のコトワリ』ってヤツを、叩き込んでくるとするか」


 などと言いながら、ザっと席を立って、

 アモンの元までズカズカと歩いていく。



「おい、こら、新入り。てめぇ、先輩が斜め前に座っているってのに、いつまでたっても挨拶がないのは、どういうことだ、ああ、ごらぁ?」



 チンピラ力全開でアモンに絡んでいくボーレ。


 ウザ絡みをされたアモンは、

 すまし顔で、


「ロコ様とあなたが、この教室に入ってきた時、『おはようございます』とあいさつをしたはずですが?」


 そう言うと、


「んな話はしてねぇんだよ、ボケ、ごらぁ。『おはようございます、の一言だけで済ませる気か、このボケが』――という極めて高度な話をしとるんじゃい、アホんだらぁ。お茶を用意するなり、肩を揉むなり、色々と方法はあるだろうが、カスがぁ!」


 ガンガンにかましていくボーレに対し、

 アモンはニコっと微笑んで、


「気がつかなくて申し訳ありません。では、肩をお揉みいたしますので、そちらの席に腰かけていただいてよろしいですか?」


「ほう! なかなか、話の分かるヤツじゃないか! 気に入った! 俺の舎弟にしてやろう! 俺の舎弟はいいぞぉ! なにがどうとは言えんけど、とにかく、いいぞぉぉ」


「うれしいです。舎弟にしていただいて、ありがとうございます」


 そう言いながら、

 アモンは、

 目の前のイスに腰かけたボーレの肩に手を伸ばす。


「力加減が悪かったら、遠慮なく言ってくださいね」


「よきにはからえ」


「では」


 そう言うと、アモンは、

 ゆっくりと、両手に力を入れていく。


「おいおい、弱すぎるぞ。新入り。俺の舎弟になった以上、ガキだからって、甘えは許されん! もっと力強く揉まんかい!」


「はい、わかりました、先輩!」


 元気よく返事をすると、アモンは、

 両手にオーラと魔力を込める。

 となれば、当然、


「いだいだいだいだいだいだいだいっっっ!!」


「動かないでください、先輩。まだ、マッサージは終わっていません」


「ちぎれる、ちぎれる、ちぎれる、ちぎれる!!」


「安心してください。肉をちぎるようなマネはしません。肩甲骨は砕いていく所存ですが」


「砕くな、砕くな、砕くなぁ!!」


「火手ランク6」


「おい、お前、なんか魔法使わなかったかっ……って、あっつぅううう!!」

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