第1022話 『最強の俺と戦ってみたくはないか?』『いいだろう。お前のワナにまんまとかかってやる』
「おい、まさか……本当に、何もないワケじゃないよな?」
などと言ってくるゼッキに、
P型センエース2号は、
渋い作り笑顔を向けて、
「一つ提案がある……のですが、ここらで、少しばかり、ティーブレイクといきませんか、ゼンさん」
揉み手をしながら、そんな事を言った。
それに対し、ゼッキは、
「……マジで、ないんかい……」
ガクっとうなだれながら、
「じゃあ、もういいや」
そう言って、
両手を、P型センエース2号に向け、
「すぅうう……はぁあ……」
目を閉じて、精神統一。
オーラと魔力を溜めに溜めてから、
「すぅうう」
最後に息を吸って、
――カっと目を開き、
「異次元砲ぉおおおお!!」
先ほどの軽撃ちとは違い、
渾身で撃たれた異次元砲。
強大な照射が、P型センエース2号の全身を襲う。
「ぐぁああああああ!!」
ほぼ一瞬で、
跡形もなく木っ端みじんになったP型センエース2号。
どこまでも呆気ない最期だった。
「かなりのヤバい強敵……だと思ったんだけど、そうでもなかったな……というか、もしかして、俺が強くなり過ぎたのか? ゼノリカ以外だと、もはや誰も相手にならない……そういう所まで来てしまったのかもな」
などとブツブツ言っているゼッキの向こうで、
粒子になって空間に溶け込んでいる『P型センエース2号』が、
黙ってジっと息を殺していた。
(は、バカが……所詮はガキだな。『どうしようもないほど存在値に差が開いている』という訳ではないんだから、流石に、どんだけ威力を高めていようと、異次元砲の一発や二発くらいは耐えられるっつーの)
気配を消し、
空気に溶け込みながら、
(このままどうにか時間を稼ぐしかない……が、しかし、いかにゼンが『ドのつくアホガキ』とはいえ、三時間近くも騙し切れるとは思えない……どうにか、次の一手を考え――)
と、心の中でつぶやいていた、
その時、
「……どうやら、俺の油断をついて攻撃してくる作戦……って訳ではなさそうだな」
ゼッキが、空間に溶け込んでいるP型センエース2号を睨みつけて、そう言った。
「っっ?!」
「なに驚いたオーラを出してんだよ……いや、流石に、そのくらいは気付くって……」
「……」
「どうやら、あんたは、なんとしてでも時間を稼ぎたいようだな……えっと……確か、俺をアンテナ基地にしたいんだっけ? で、1号の戦闘力データがどうたら……」
ぶつぶつと言ってから、
「これは、あくまでも推測だが……おそらく、今のあんたは、アップデート中のパソコンみたいな状態で、アプデが終わると、すごく強くなる……みたいな感じなのかな?」
ゼッキの推測を聞くと、
P型センエース2号は、自身の粒子を結集させて、
元の姿に戻り、
「……ああ。おおむね、その通りだ」
そこで、P型センエース2号は、少しだけ頭をまわし、
「P型センエース1号のデータを俺にコピーすることで、俺は、今よりも30パーセントほど強くなれる。もちろん、『全力を出した俺』の30パーセント増だ」
「……ふむ」
「そうなれば、お前とも互角に渡り合える。勝てるかどうかは微妙なところだが、少なくとも、みっともなく逃げ回ったりはしない」
「30パーセント……微妙なラインだな……あんたの全力がどの程度か不明だから、なんとも言い難いけど……」
「どうだ、ゼン。今の俺なんか倒したって、なんの自慢にもならないんだし、ここは、少し待ってみないか?」
P型センエース2号の言葉を受けて、
ゼッキは、
「……ふぅむ……」
数秒考えてから、
――答えを出す。
「……いいだろう。お前のワナにまんまとかかってやる。好きなだけ時間を稼ぐがいいさ。なさけないままの貴様を倒しても自慢にはならんからな」
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