第800話 ゲームスタート。
「荒野の奥に、上へと続くエレベーターを守っているボスがいる。倒せば上にいける。一度倒せば二度と出現しない」
(コレ、完全にソードでアートなアレじゃねぇか……)
(ガチャをまわす金をどうやって工面していくか、が問題になりそうだな……『生活費』を削っていくしかないか……しばらくは、野宿して、メシ代も節約して……)
「この一階には出現しないが、2階より上では、時々、『九華』と呼ばれるボーナスキャラが出現する。もし倒す事が出来れば、膨大なボーナスがもらえるが、ハッキリ言って、今の貴様ら程度では絶対に勝てん。逃げる事を進める」
(逃亡推奨の強敵……ねぇ)
(ボーナスキャラというより、世○樹の迷宮のFOEみたいなものかな……)
「アダムさん、質問です。その『九華』という敵は逃げ切れる相手なのですか?」
「逃げ切れるかどうかは、貴様らの性能しだい。……一応言っておくと、九華が出現していられる時間は限られているし、やつらには、いくつかの制限もかけられている」
(能力と時間の制限つき……)
(その縛りがどのくらいか知らないけど……制限時間が過ぎるまで耐えたら、殺されることはないってことかな……)
「最後に、チュートリアルをクリアした貴様らに、その報酬として、無料10連をプレゼントしてやる」
アダムが、そう言いながら、指をパチンと鳴らすと、その直後、
トウシたちが持つMDデバイスが、ピロリンと鳴った。
「その10連は、ログボのガチャ券とは違い、当人のスペックで出目が左右されることはない『普通のランダム仕様』となっている。『その10連は』というか、ここから先の全てのガチャがそうだが……さて、説明は以上だ。私は、常に、貴様らを監視している。監視と言っても、見張っている訳ではなく、案内役として、見守っているだけだ。今後は、聞きたい事が出来た時に声をかけろ。可能な範囲内で答えてやる」
と、そこで、軽そうなノリの少年が、
「じゃあ、はいはい! 聞きたいことある!」
手をあげて、
「何カップ? 超巨乳だけど、どのくらい? G? それともH? あと、彼氏いる?」
などと言った直後の事だった。
アダムが所有している携帯ドラゴン『アレス』が、
一切の躊躇なく、軽そうなノリの少年の携帯ドラゴンの頭部をワンパンで破裂させた。
「ぁ……ああ……うそだろ、ちょっと質問しただけで、殺すなんて――」
あっさりと、光の粒になって消えていく少年。
その姿を見送ることなく、アダムは言う。
「ゲームに関する質問なら、なるべく答えてやる。ただし、下らない質問をした者は問答無用で殺す。私は確かに貴様らの案内役だが、修学旅行のバスガイドではない」
「「「……」」」
戦慄が走った。
あまりにも呆気なく死んでいく同級生の姿を見て、何も言えなくなる少年・少女たち。
「何をしている? すでにゲームははじまっているぞ。死ぬまでそこでボーっと突っ立っているつもりか?」
言われて、少年・少女たちは、気合いを入れ直した。
色々と衝撃的な出来事は多かったが、
大半の者は、即座に自分を持ち直す。
ここにいるのは、全員中学生だが、どいつもこいつも優秀な者達ばかり。
ただ、同年代の者が殺された事に対して意味もなく泣き叫んだり、己に降りかかっている不運を嘆いたりする者などはいない。
そんな事をしそうなバカは既に殺された。
残っている優秀な者たちは、必死になって頭を回転させている。
生き残るために、
勝ち残るために、
家に帰るために、
必死になって、頭を働かせる。
そんな中、まず、最初に口を開いたのは岡葉だった。
「さて、どうする?」
周囲の人間の意見を確認した。
自然と全員の前に出る岡葉。
根っからのリーダー体質。
――と、そこで、
利発そうな三つ編みの少女『蜜波(みつなみ)ナツミ』が、
「アダムさん。一つ質問させてください」
そう言って手をあげた。
シルバーフレームのメガネと三つ編みが特徴的な、学級委員タイプの女子。
頭の先からつま先まで、落ちついたスタイルでまとめているため、あまりキラキラ感はないが、よくみると、かなりの美少女だった。
ジュリアや鈴木宝馬にも劣らない(勝てはしないが)端正な顔立ち。
勇気のある三つ編みの彼女は、まっすぐな目でアダムを見つめ、
「クリアしたら、なんでも願いを叶えてもらえるとの事ですが、それは、クリアした者全員でしょうか?」
「いや、違う。『誰か一人でもクリアすれば、全員助かる』――が、偉大なる神に願いを叶えていただけるのは、最初にクリアした者だけだ。言うまでもないが、『全員の願いを叶えてください』はなしだ。主上様に対し『配下になれ』などと命令するのも当然なし。最初にハッキリと言っておくが、たとえクリアしたとしても、主上様に対し、少しでもナメたマネをしたら、その場で迷わず殺す」
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