第798話 神の力。
そこで、場がザワっとした。
妙な空気に包まれている、そんな中、モンジンは、
「俺もお前らと同じで携帯ドラゴンを所有している。ウチの子は、俺の装備アイテムだけあってケタ違いに強い。もし、ウチの子を殺す事ができたら、全員、家に帰してやる」
と、そこで、
「じゃあ、さっそく挑戦する!」
そう言って、一人の気合いが入っていそうな茶髪が名乗り出て、
「俺には、こんなくだらないゲームに参加しているヒマはねぇ! お前の龍を殺して、俺は帰る! 言っておくが、俺の龍は強いぜぇ! なんせ、最初のガチャで、☆Xを引いたからなぁ! あのクソゴーレムをワンパンした俺の龍の力に震えろぉおお!」
そう叫び、モンジンに向けて、携帯ドラゴンを突撃させる茶髪。
その様を見たモンジンは溜息をついて、
「本当にチュートリアルを突破できたのか、と不思議に思うほど頭が悪いな」
ボソっとそう言ってから、
「……ディザスター・レイ……」
携帯ドラゴンに命令すると、
モンジンの携帯ドラゴンはカパっと口を開いて、
強大なエネルギーの波動を照射した。
圧倒的な火力に包まれた茶髪の携帯ドラゴン。
一瞬で消滅。
その直後、
「ぁ……ああ……ウソ……だろ。マジで死――」
携帯ドラゴンを失った茶髪の体は、あますことなく光の粒になって、世界に拡散していった。
「ご覧の通り、俺は、刃向う者は迷わず殺す『情け容赦ない神』だ。異世界モノで稀によくみる『お気楽な神』とは『性質が違う』と理解しろ。俺に挑戦するのは自由だが、ハンパな力では殺されるだけ。それを肝に銘じておくように」
そこで、モンジンは、全員を見渡して、
「俺に挑戦するなら、最低でも強化値1000%以上にしてから挑む事だな。そうでなければ、相手にならん」
そこで、岡葉が、歯噛みして、
「……1000……か……遠いな……」
と、そこで、
トウシは、
(最低でも1000……ワシのエルメスは、700ちょっと……100人の中では、ぶっちぎった強さを持っとるけど……これでは、まだ足りん……さすが、神様、めちゃくちゃな力をお持ちで……けど、ゲームは始まったばかり……どうやら、『☆X必中の裏技』は通用するみたいやから、どうにか、良質な☆Xを回収しまくって――)
と、心の中でつぶやいてから、
「神様、一つ質問……いいすか?」
「なんだ?」
「強化値をあげる方法を聞かせてほしいんすけど」
「タワーを登っていけば、おのずと分かるようになっている」
「……了解でーす」
「さて、そろそろゲームを始めよう。命がけのタワー攻略、スタート」
★
タワーの扉を開けて、中に入ると、
そこには、広大な世界が広がっていた。
広がる荒野と、すぐ右手にある小さな街。
タワーの中のはずなのに、薄く雲が広がる青空があって、さわやかな風が吹き抜けていく。
「ここは……」
茫然としていると、
彼・彼女達の目の前に、
「傾聴」
とんでもない美女が現れて、そうつぶやいた。
その妖艶な美女は、
全員の視線が集まったのを確認すると、
「偉大なる『神の王』であらせられる主上様より、貴様らカス共の案内役を仰せつかった、神の側仕え『アダム』だ」
「「「「「……」」」」」
「簡単に、ゲームの流れを説明する。荒野にはモンスターが出現する。倒せば、MDPを入手できる。あそこの街では、MDPでなんでも買える。宿屋や飯屋はもちろん、携帯ドラゴン用の強化パーツが入手できるカジノなんかも完備。この一階に出現するモンスターは、初期状態の携帯ドラゴンでも倒せるザコばかり。まる一日狩り続ければ、300MDPは楽に稼げる。300もあれば、宿も飯もどうにかなる」
アダムの話を聞いて、この場にいる者は、それぞれ、
(なるほど……そういうゲームか……)
(どうにかなるってことは……余裕ではないってこと……少なくとも、ガチャを回せる金は残らないだろうな……)
(この一階は、チュートリアルの続きみたいな感じかな……)
(あのアダムって女、めっちゃエロいな……)
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