第778話 双頭のラムドキマイラ。
「ぬぅ、うっ!」
終始押されっぱなしのガイリューは、ついに、
「くはっ」
剣を弾き飛ばされて、その喉元に切っ先をつきつけられてしまった。
「……くぬ……」
ガイリューは、冷や汗を流しながら、
苦虫をかみつぶしたような顔で、
ギリギリと奥歯をかみしめつつ、
「……ゆ、勇者は……」
「ん?」
「勇者は……お前よりも強かったのか……リーン・サクリファイス・ゾーン」
「うむ。手も足も出なかった」
「そんなヤツを……ラムドは……」
情弱のガイリューでも、ラムドが勇者を倒したという話くらいは耳にしている。
『リーンは破れたが、ラムドが撃退した』という、今、世界で最も話題のニュース。
一応、ガイリューも国王なので『国外での出来事について何も知らずに生きている』というワケではない。
『相対的情弱』である事には違いないが、『完全無知』ではない。
――リーンが言う。
「言っておくが、ラムドはワシより遥かに強いぞ。このワシが手も足もでなかった『勇者』を、ラムドは3分の2以上の余力を残して勝利してみせた」
「3分の2……なんだ、その妙に具体的な数字は……」
そこで、リーンは、
至極自慢げに、
まるで自分の功績を誇るかのように、
「ラムドは、スリーピース・カースソルジャーという『三体の凄まじく強い兵士』を召喚する切札を持っている。カースソルジャーの戦力は凄まじく、勇者ですら、一体を倒すので精いっぱいだった」
「……貴様よりも強い勇者……それに匹敵する戦士を……三体……?」
「龍の国を統べる者、ガイリュー・カリよ。世界はこれから、ラムドを中心として、大きく動いていく。世界は変わっていく。巻き込んで悪いが、ついてきてもらう」
「……っ」
どう答えを出すべきか逡巡している様子のガイリューを見て、ラムドが、
「リーン。さがってくれ。お前の仕事は終わった。ここからは俺の仕事だ」
「ま、まて、ラムド。ガイリューはまだ答えを出していない。ガイリューを殺すな」
「俺が望む結論を出させるだけだ。命を奪いはしない」
リーンを黙らせてから、ラムドは、
「ガイリュー。お前の『悩み』を殺してやるよ」
言いながら、アイテムボックスから30枚のラムドカードを取り出して、
「……2枚の『ラムドキマイラ』を『アマルガメーション』のラムドカードで合体させ、『双頭のラムドキマイラ』を召喚! ×10!」
宣言すると、
ラムドの周囲に、10体の『双頭のラムドキマイラ』が召喚される。
存在値25のラムドキマイラを2体合体させたというのに、
その存在値は、60を超えていた。
存在値60は、王族クラスの力。
それが10体。
「俺が召喚する『双頭のラムドキマイラ』は特別製でなぁ、素人なら存在値39でしか呼び出せないんだが、俺の場合は、60で召喚できる。基本、俺は特別。なににつけても」
「ぁ……あ……」
「ちなみに、ラムドカードは、まだまだある」
言いながら、ラムドは、アイテムボックスから、
『100枚入りのデッキ』を取り出して、ガイリューに見せつける。
「この中には、ラムドキマイラよりも強い召喚獣も何枚か混ざっている。ラムドサンダーバードなんかはお勧めだ。ハッキリ言うが、お前よりも強い」
「……」
「え、なに? 信じられないから見せろ、って? ワガママなやっちゃなぁ。特別だぜ?」
言いながら、ラムドは、デッキの中からラムドサンダーバードを引いて、召喚する。
召喚されたのは、雷を纏った怪鳥。
獰猛な目でガイリューを睨みつけている。
その体躯に内包されている力は、明らかに、変身したガイリューを超えていた。
「言っておくが、ラムドサンダーバードは、決して最強の切札ってワケじゃねぇぞ。俺のデッキの中だと『上の中』くらい。最強のラムドカードは、『ラムドアイズ・ウルトラバイオレットドラゴン』。ラムドアイズに関しては勇者とほぼ同等だ。めっちゃくちゃ強い。強すぎて量産できないレベル」
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