第574話 革命の日は近い。
気持ち良さそうに喋っているカリネに対し、
モナルッポは、『へぇ』と感心顔で相槌をうちながら、心の中で、
(ランク5の魔カードの量産……もし、事実であるならば、世界がひっくり返る)
周囲の全ての者から、『無能』扱いされているモナルッポ。
――王族の血は継いでいるので、潜在能力はそこそこだが、怠け者で勉強嫌いであるため、上二人と比べれば実性能はゴミのよう。
国にも社会にも政治にも興味がなく、連日連夜、酒と女に溺れるだけのバカ王子。
父や二人兄から『勇者ハルス(性格は狂っているが性能は世界一の大天才)』と比較されることも多く、その際には、『お前と比べたら、有能な分、勇者がマシに思える』とまで言われる始末。
この世界を支配していると言っても過言ではない『魔カード産業』についても無知極まりなく、戦闘能力も存在値30ちょっとで微妙。
そんな評価を受けているモナルッポが、今、考えていることは、
(もし、本当にランク5の魔カードを量産できるのなら……それを軍事に用いると……もちろん、量産できる量によっても話は変わってくるが、仮に、現在のランク2と同じか、その半分ほど生産できるだけでも……ほんの数カ月程度の生産期間で、フーマー以外の国なら楽に落とせるだろう。当然、フーマーはその暴挙を許さないだろうが、しかし、かの企業はフーマーに真っ向から逆らっているという……それは、すなわち、『やるつもり』だからではないか?)
高速で世界の今後を演算する。
ありとあらゆる情報を繋ぎ合わせて未来のシルエットを探る。
これまでに蓄積してきた手札の切り方を思案する。
(世界全体が、なかなか、熱くなってきたじゃないか。これは、本格的に動き出さなければいけない時期がきたとみるべきだな……立ちまわりは慎重に、されど臆病にはなりすぎず、時には大胆に……)
モナルッポは、これまで、『革命』のための準備を整えてきた。
モナルッポからすれば、祖国は、退屈なゴミためだった。
国は小さく、優秀な人材は少なく、『強み』はおろか、個性すら特にない。
セファイルほど劣っているワケではない。
すべてにおいて、セファイルよりまし。
だが、こんな状況ならば、むしろ、いっそのこと、セファイルより小国だった方が良かったと、モナルッポは思っている。
最下位の方が、まだ目立つというもの。
ミルスは、セファイルほどショボくはないが、ほどほどにしょうもない国。
『それじゃあ情けないから』と頑張って、自分達を大きく見せようと、いろいろ頑張ってみたりもするけれど、カラ廻りするか、見栄えだけのハリボテになるだけ。
それが、モナルッポの祖国『ミルス王国』。
(魔王国が宣戦布告する直前から、セファイルでは妙な動きがあった……『何か』が動いていると見て間違いはない)
モナルッポは気付いていた。
世界の情勢。
運命のズレ。
(大きなウネリは起こった。だが、いまだ『輪郭しか見えていない』という現状。……これは大問題)
世界を相手にラムドが大暴れして、呼応するように、セファイルで異常な技術が産まれた。
ウネリはあった。
しかし、いまのところ、漠然とした全体像しか見えていない。
(深く潜る必要がある。動くなら今。手持ちの全てを総動員して……いや、カードを切るだけではなく、この俺自身も動くべき。この大きな流れに乗り、革命を起こす)
モナルッポの望む『革命』とは、『世界の王』になること。
フーマーをも支配下においた『無上の神格化』が最終目標。
ラリっている勇者では出来ないが、自分ならば出来ると確信しているモナルッポ。
能力だけなら、勇者の方が、『世界の王』の地位に相応しい。
だが、勇者はあまりにも『愚か』が過ぎる。
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