第350話 ゴート・ラムド・セノワール
「せんえーす……?」
「ええ。閃(ひらめ)くに壱番(いちばん)で、センエース。なかなかの厨二ネームでしょう? 親のセンスを疑いますよ。まあ、センス以外にも色々と疑ってかからないとマズい、諸々イカれたクソ親父だった訳ですが」
「それは、本名?」
「もちろん。……? どうしました? 何か問題でも?」
「大アリよ。それは神帝陛下の御名。神帝陛下以外で、ソレを名乗る事は許されていない」
「……神帝陛下……ですか。それは普通の神とは違うのですか? 確か、あなたも神格化を目指しているのですよね? その辺の事情を、少し詳しく聞きたいですね」
「……そう、ね。これは……キチンと言っておかないとマズそうね……」
そこから、五分ほどかけて、
UV1は、『神』――『天上』についてをラムド(センエース)に説いた。
詳細はボカしつつ、簡単に概要だけ、
ゼノリカを支配している、三柱の最高位神。
その支えとなる五柱の天帝と、九柱の神族。
そして、『天下のシード』が辿りつける最高位、
UV1が目指す玉座――神の末席、九華の第十席。
そんな神々を束ねるという『設定』の偶像、神帝陛下センエース。
全ての生命の頂点にして、神の中の神。
話を最後まで聞いたラムド(センエース)は、
「なるほど。象徴としての大御神と、その血族で構成されたという『設定』の天上、そして、人の身で辿りつける最高位の十席……ははは、ゼノリカというのは、なかなか面白い宗教団体ですね。……正直、宗教は好きじゃないが、ゼノリカは少しだけ楽しそうだ」
笑いながらそう言って、
「しかし、すっげぇ偶然……まさか、それほど大きな神と俺の名前が同じとは、これは、ただの偶然か、それとも、なんかの運命か……」
「なにはともあれ、その名前は改めなさい。本当に本名ならば、簡単に変えたくはないでしょうけれど、百済の頭目である私が、枠外扱いとはいえ一応直属といっても差し支えない部下に、その名を名乗らせている訳には――」
「いいえ、別に、名前を変えるのは全然構いませんよ。この名前にこだわりなどはありませんから」
「そうなの? 変わっているわね。それとも、やはり本名ではないの?」
「いえ、本名ですよ。ただ、自分の名前なんかに執着はしていないだけです。んー、しかし、名前かぁ……どうしようかなぁ……」
数秒だけ悩むと、
「じゃあ、これから、俺は、ゴートとでも名乗りましょうかね。ゴート・ラムド・セノワール。それが俺の本名ってことで。魔王国で、そちらさんから与えられた仕事をする時は、ラムドを名乗りますよ」
「……別に、センエースを名乗らなければ、なんでもいいのだけれど。……ちなみに、割とあっさり決めたようだけれど、その名前、なにか理由でも?」
「前の世界では、スケープゴート(生贄・身代わり)にされて殺されましてね……その結果として、俺は今、ここにいるので、まあ、そこからとらせてもらいました」
「……生贄? なんの?」
「俺は、こことは違う世界で、『時折、異界からやってくる諸々を対処する仕事』……いわゆるメンインブラック的な仕事をしていましてね。そこで、まあ、色々あって、結果的に、アルマゲドン的な『誰かが死ねばどうにか世界は助かる』という、お決まりの状況下になりまして……そんで、俺が選ばれました、と。そんな感じですよ。事実とは少し違うというか、かなり良いように改編していますが、まあ、多少盛るくらい勘弁してくださいよ。俺にも全米を泣かせたいっていう欲求が……まあ、なくもなくもないってところなんでね」
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