第251話 あの神様はきっと、
「五神ねぇ……それ、なんなの? よくわかんないから、教えてくれない?」
「この世界の支配者を飾る宝石!! 全てを統べる者の右腕!! 私を殺せば、主が黙っていないぞぉおお! 主は貴様よりも強い! 分かったな! 分かったら、手を離せぇえええ!」
「その主を裏切って俺につくって話をしていなかったっけ?」
「そうだ! 裏切ってやる! だから、離せぇ! 何度も言わせるなぁ! 痛いんだよ、くそがぁああああ!!」
「主は俺より強い……なのに裏切る? なんていうか、支離滅裂だな……そうでもないか? 俺を騙そうとしているけど、あまりの痛みから本音が漏れでてしまっている……単純に、それだけの話か」
テレビでやっていた人狼ゲームで、追いつめられた『裏切り者(占い騙り中)』が焦って、矛盾した発言をして自爆するシーン。
と、目の前のホルスドがかぶって、ゼンは少しだけ笑った。
「ちなみに、聞きたいんだけど……お前の主は、本当に俺より強いのか?」
「当たり前だ! 主は強い! この私ですら手も足もでなかった! ゆえに私は、神でありながら、主の配下になったのだ! 主は無敵! 最強! その主に、私は愛されている! 私を殺せば、貴様は主の怒りを買う!! だから、私を殺すなぁ! いいなぁ!」
「よく見ろ」
そこで、ゼンは、UFオーラを調節し、ホルスドの目にだけ、己の真の力が見えるようにしてから、
「本当に、その主ってヤツは……俺よりも強いのか?」
「……っ……っ……っっっっっっ!!!」
ゼンの力、その膨大なオーラを目の当たりにしたホルスドは、目と口を限界まで見開いたままの姿勢で固まった。
二度ほど口をパクパクさせて、
そして、ゆっくりと首を横に振る。
別に、ゼンの言葉を否定している訳ではない。
ただ、子供が、『イヤイヤ』をするように、勝手に首が動いている。
つまりは、ただの拒絶。
ありえない『力』に対する絶望が、ホルスドの首を動かしている。
それだけ。
「なあ、ホルスド。さすがにないだろ? いくらなんでも、それは無いよな? 俺、攻撃力、190億とかだぞ? その主ってやつの力が、お前より一万倍強かったとしても、俺の力には、まだ一万倍足りないんだぞ?」
「ぉま……ぁ……な、なに……もの……」
「俺? ああ、そういえば自己紹介がまだだったな。俺は、本物の神様から、このバグったようなチートをもらった男子中学生……名前はゼンだ。よろしく」
「……本物の……神……」
「今、ハッキリと分かった。ウチの神様が本物で、お前らの主は、ただの偽物……まあ、この世界の一般的な連中と比べれば、お前は別格だから、その主ってやつも、相当な化け物なんだろうけど……ウチの神様と比べれば、ゴミなんだろう……それとも、俺が強くなりすぎただけで、実は、俺、すでに、あの神様より強い?」
言ってみたものの、ゼンは、すぐに首を横に振って、
「……いや、たぶん違うな……」
なんとなく、『違う』と思った。
根拠はない。
ただ、違うと分かる。
不思議な感覚だった。
きっと、
あの神様は、
今の自分よりも、
『これほどの力を得た自分』よりも、
――もっと、もっと、もっと、果てなく遠い場所にいる――
「となると、『超魔王軍』も……そういう『領域』だと考えておいた方がいいんだろうな……すげぇな。はは……ゼノリカだっけ? 今の俺よりも遥かな高みにいる神様に鍛えられ、認められた奴3体がトップを張っている組織……どうやら、想像していたよりも、遥かにすげぇ組織だったみたいだな、超魔王軍ゼノリカ……ぁあ、すげぇ、ほんとうにすげぇ……」
ラスボスを頭に描いてみて、魂が震えた。
これだけの、イカれた力を得て、なお、自分はまだ、スタート地点にいるという異常な事実。
その幸福。
その至福。
終わりなき旅路。
果てなき未来。
広がっていく!
世界が!
全てが!
これまででも大概だったのに!
まだ、行く!
全然止まってくれねぇ!
そうだ!
もっと、もっと、もっと、
もっと!!
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