最終試験

第五話    先生のプレゼント 

「もたもたするな! さっさと集まれ!

 いつまで、私に大声を張らせるつもりだ、この〇〇ガキ共がッ!!」



 監督台に現れた黒いローブの女性は、よく通る声で候補生達を叱りつけている。



 すこしクセのある赤毛をおさげにまとめた、そばかす顔は、素朴な雰囲気を感じさせるが、その雰囲気と態度からくる印象を裏切るような端正な顔立ちをしている。



「今年の候補生はずいぶんと余裕だな。

 せいぜい、ぶっこいてな。すぐにチビらせてやる」



「うわぁ…。朝から、すごいなぁ……チェスナット先生」


「リィリィっ……聞こえちゃうよっ」



 リィザとマヘリアがヒソヒソと話していると、



「当然聞こえているぞ、エリザベッタ・ウィスタリア!!

 それほどお気に召したなら、もっと " すごい " 私を見せてやろうかッ!!!」


「結構ですー」


「リっ…リィリィっ……!! ごごめんなさいっ! チェスナット先生っ!!」



 マヘリアが、あたふたと頭を下げる様子を一瞥すると、視線を戻し話を続けた。



「……フン、まあいい。

 今日でお前達ヒヨッコ共も修了の日を迎える。

 そこでだ。そんなお前達に、私からほんのささやかなプレゼントを用意した」



 二ィと笑って指さした先に、そびえ立つような大きな木箱が置いてある。



「まんまる焼きの山かな?」


「もぉ~」



 リィザとマヘリアがのんきに話し、その後ろでランスがプニニモドキ顔をしていると、突然、大きな木箱が、すさまじい音とともに砕け散った。



 候補生達の驚きの声が響いた後、木箱のあった場所で舞い上がった砂埃の中から重く不気味な音が聞こえてきた。



 ヴググルルロロロロロロロォォォォォ…………ッッッ



 生存本能に働きかけ、恐怖と嫌悪を喚起させる「音」。

 やがて砂埃が収まってくると、不気味な音の主が姿を現した。



 一見、牛の頭をした巨人。


 だが、角は異常に大きく、牛の口の部分はなぜかすぼんだような形で穴があいており、その異様さを放っていた。


 候補生の中には、すでにすくみ上がり身じろぎできない者もいる。


 監督台の、ベッカ・チェスナットが不敵な笑みを浮かべた。



「気に入ったか?」








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