ゴミスキル【捕食】持ちの俺、ダンジョンで魔物に寄生されたせいでゴミスキルがチートスキルに進化したけど、なんか気づいたら白髪美少女になってたんだが
絶対一般厳守マン
第一章 プロローグ
第1話 胎動
「んー、あー?ラッキー、このゴブリンの魔石でかいぞ」
:ほんまや
:割と大きい方やね
俺の声がダンジョンの中に響く。
俺は魔物の内臓をかき分けながらそう言った。
「今日は贅沢が出来そうだね」
:晩餐
:うまい飯でも食え
俺の名前は
しがない一般サラリーマンだ。
ちなみに年収200万くらい、つまりは世間一般に言われる低給料とやらに分類される。とは言っても新人サラリーマンとしては普通くらいだとは思うけどな。
まー、つっても月末に財布が燃えるのには変わりなし。
だからこうして副業的にダンジョン配信をして金を得ようとしている訳だ。
あ、ちなみに言っておくと俺はD級の底辺冒険者だ。
別にどっかの物語の主人公みたいにS級だとかじゃないぞ。
期待してたのに違った?
別に幻滅してもらって結構、ほら帰った帰った。
……まあ、そりゃそうだ。どこかの一般人がそんなトップ冒険者になんかなれるわけがない。そんな才能など、そんな簡単に得られれば人生などヌルゲーになっちまう。
「今日は、なんかゴブリンがいっぱい湧いているな。ビールが歩いてくるぞ」
:それな
:なんか多い
:ビールが歩いてくるは草
ゴブリンの魔石は一個当たり200円。
ちょうどビール一缶買えるくらいだ。
まあ、トップ層の冒険者からするととても低く感じるだろう。
わざわざゴブリンを探してまで200円を得る価値はあるのか?なんて思うだろう。
しかしながら、俺みたいな底辺冒険者からするとありがたかったりする。
なにせ楽に倒せるのだ。
ゴブリンは知能が低いD級モンスター。
俺みたいな雑魚でも簡単に倒せる。
それに、素材を剥ぐのも比較的簡単だったりする。
だから俺からするとビールが歩いてくるみたいな感じだ。
「グギャ!」
ダンジョンを歩いていると、時々ゴブリンの襲撃があるのだが、極めて簡単に避けることができる。
なにせ、ゴブリンの攻撃は大振りで、見切りやすい。
「ふんっ!」
棍棒を振りかぶったゴブリンの攻撃を避け、カウンターにバールを叩き込む。
あ、バールを使っている理由は、安いからだね。
A級冒険者とかだと魔剣を使っていたりするらしいが、俺には手が出せないような金額だ。
だからこうして、比較的安価に火力の出る武器としてバールを選択している。
「ギャギャ!」
俺のバールをもろに食らったゴブリンは顔面を陥没させ、絶命した。
そして、絶命したゴブリンから魔石をはぎ取る。
作業を終えた俺は、額に浮かんだ汗を拭った。
「ふう、今日はこれで20体目か?だいたい4000円か」
:めっちゃ儲けとるやん
:今日は晩餐会やね
:贅沢ができる
「さあ、そろそろ帰ろうか。今日はいつもよりも贅沢が出来そうだね」
:お、来たか
俺は別にS級みたいなかっこいい冒険者じゃない。
かっこよく魔物を倒し、好きなだけ稼ぐ。
そして好きな事を好きなだけする。
まあ、そんな人生、一回は憧れたりしたさ。
でもな、結局俺には無理な話なのだ。
無理なものは無理。
S級みたいな強力なスキルではなく、【捕食】とかいうゴミスキルを持っているうちは無理だろうな。
ちなみに、【捕食】の効果は、胃を頑丈にして大体のものは食べれるようにするって効果だ。効果はそれだけ。
名前は大層なものなのに、中身はゴミだ。
正直、戦闘向きじゃない。
だから、そんなS級になれる訳がない俺が憧れるなど烏滸がましい話である。
それに、こうして週末にダンジョン配信をして、小銭を稼ぐ。
稼いだ金でささやかな贅沢をする。
そんな一連の様子を配信して視聴者にちやほやしてもらう。
それだけで俺は幸せなのだ。
これ以上を求めるのは罪であろう。
それに、この配信で、皆にちやほやしているもらえているのだ。
十分幸せ者だ、俺は。
「──グガガガ」
と、その時だった。
すさまじい覇気が後ろから感じた。
:え!?
:なにあれ
:ゴブリンキングやんけ!
:逃げろ!
:どうしてこんなところに?
:主ヤバくね?
振り向くと、そこには巨大なゴブリンが。
瞬間感じた。
すさまじいまでの実力差を。
「は?どうしてこんなところに居るんだ?」
俺じゃ相手にならない。
死ぬ。
脳が大音量で警告音を鳴らしている。
:逃げろ逃げろ!
:やばいぞ!
本能に従い、ゴブリンキングとやらから離れるように逃げる。
しかし、俺の実力ではすぐさま追いつかれてしまった。
「ガッ!」
背中からとてつもない衝撃が伝わる。
そして、そのまま俺は吹っ飛ばされた。
何度か地面にバウンドし、壁に激突する。
「ゴ、ゴホッ、ゴホッ、おえッ!」
ごぼごぼと何かが口から零れる。
ぬるりとしたそれを手に取り見ると、血だった。
ああ、俺、死ぬんだな。
ふとそんな事を思った。
「どうやら、もうだめらしいな……ゴホッ」
:おい、大丈夫か!?
:通報しろ!
:した!
:誰か助けにくるまで堪えろ!
:大丈夫、諦めなければ大丈夫だ!
いや、もうだめだろう。
目の前にゴブリンキングが立っている。
その目は殺意に満ちており、同胞のゴブリンを殺した俺を心底憎んでいるかのような目だった。
うん、ダメだな。
こりゃもう、生きて帰ることは厳しいな。
「……すいません。俺みたいな底辺冒険者の配信を見に来てくれて、それだけじゃなくて配信を楽しみにしてくれている人まで居て……このまま死ぬのは本当に……」
でも……
「もう、無理そうです。今までありがとうございました」
:ああああああああ!!!
:やめろ、そんなこと言うな!
:同じ境遇な主が好きだった!!!
:どうしてだよおおおおお!!!
ははは、俺、幸せ者じゃん。
こんなに死を惜しんでくれる人がいるなんて
「ああ……死にたくない」
だからこそ、そんな言葉が零れる。
あともう少し、ほんの少しだけでもいい。
いや、もっとだ、もっと生きたかった。
こんな若くに死ぬのはおかしい。
「ああ、死にたくない、死にたくない、死にたくない!!!」
まあ、無理な話だろうな。
こんな俺じゃ、無理な話なのだ。
「グギャガ……」
ゴブリンキングはその手に持つ棍棒を振り上げ、そして下した。
激痛とともに視界が暗転する。
『適合を確認、これより同一化を始めます……成功
……障害を確認
生存の妨げとなる可能性があります……排除を実行します』
暗闇の中で、何かが蠢いた。
▽
「おい、どうなってんだこりゃ」
とある冒険者は驚愕に呟いた。
救助申請があったと思って来てみたのだが、すさまじい光景だった。
「一体全体、どんな殺し方をしたらこんなことになる?」
救助申請があった現場は、魔物の血痕に満ちており、肉や内臓が飛び散っている。
刃物やハンマーで殴った感じではない。
もっと、こう、殴って吹き飛ばしたかのような飛び散り方だ。
すさまじい力で殴ったに違いない。
「こりゃあ、化け物だな」
魔物は原型を留めていない。
元がどんな魔物であったかどうかすらもわからないまでに粉々になっているのだ。
(こんなところに居ても……ロクな事が起きるに決まっている。さっさと逃げるか)
そう判断する冒険者。
こんな芸当が出来る存在など、出会えば碌なことが起きない違いない。
そして、冒険者はさっさと去っていった。
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