短編的な恋
鈴怜
運命の王子様
高校生の二人のお話。
すれ違っている二人は…?
香純(かすみ)
高校1年生。
中学の時に助けてくれた人を探している。
オタク。
洸(あきら)
香澄を助けた張本人。
オタク、香澄を助けたのをずっと隠している。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
部室の椅子に座り、二人が迎え合わせで座っている。
「ねぇ、洸先輩~!おかしいと思わない!?」
「何がおかしいって?お前の頭?」
「アホタレめ!あたしの頭なわけあるかぁー!」
バシン!と大きな音とも洸は頭を抑えた。
「いって!おま…オタクの知識の宝庫を殴るな!!!」
「洸先輩が明らかにおかしいことをいうからじゃ!おかしいのは、あたしの探し人が居ないって話です!」
「あぁ、お前の王子様だったっけか?」
「そう!あたしの王子様……!」
香澄は顔をほころばせ、うっとりするように語り始める。
「忘れもしない!中3の夏休み前!持ち物がいっぱいで転けたあたしを助けてくれたの!すっごくかっこよくて、一目惚れだったの……」
「はいはい、分かった分かった。早く見つかるといいなー」
洸は興味無さそうに携帯を弄りながら、面倒くさそうにゲームを始めた。
「思い当たる人が居ないのぉー!なんでぇ!?卒業しちゃったの!?王子様ぁー!!!!」
「部室で叫ぶな~アホタレ!お前の王子様はそもそもほんとにここな訳??」
「間違いない!すぐに帰ってから調べたんだから!ねぇー!先輩は卒業生とか、転校生とかそういう人知らない!?目の青いかっこいい人!」
「知らないよそんなヤツ。俺は陰キャのオタクなの。目の青いヤツなんか」
「ねぇ〜どうしてなのぉー!!!!」
「はぁー……」
机に突っ伏し、さめざめと泣く香澄を洸は一瞥してからため息をついた。
【俺が助けた、なんていえねぇよなぁこいつに。
王子様補正ってのも許せねぇしさ。】
ふぅーとため息を吐き出して、洸は一瞥した目線を携帯へと向ける。
「何でそんなにその王子様追いかけてんの?別に他のやつでも良いだろ」
「まずね、お礼を言いたいの。ちゃんと言えなかったから。」
「それで?」
「あたしは貴方の綺麗な青い目に惹かれましたって言いたいの。キラキラして、真っ直ぐで素敵な瞳が好きになったの。」
「……そいつは、本当は、それを嫌かもしれないじゃないか。日本人ならみんな、黒い瞳だろ。」
「それでも、あたしは好きなんだよ。その瞳も、あの時あたしを助けるために、膝を着いて荷物を拾ってくれたことも……あたしにとっては、凄く大事だったの。だからお礼と好きを伝えたいの。」
そうはにかむ様に笑う香澄を見て洸は頭をかきむしった。
「意地を張るのも…考えもんか…」
「え?何か言いました?先輩!あ!ちょっ……風つよっ!!!」
桜の花が舞い込むほどの強風にかき消された洸の呟き。
「何にもねぇよ!お前の王子様、見つかるといいな」
「もー!洸先輩も探すんですよぉ!ほんとに!」
「へーへー!」
【まぁ、顔は覚えてないみたいだし、思い出すのが先か、俺が折れるのが先か。賭けてみるのも悪くねぇか】
END
短編的な恋 鈴怜 @rinrei0730
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