魔女と悪魔

アクネメ

第1話 悪魔として

昨日、親友が死んだ。


俺の人生は散々だった。

両親は浮気するしクラスメイトからは疎外される日々。担任は俺のことを気にしたりしない。

なんなんだよこの人生。



顔も良いわけでもなく身長も高くなく平均的。

そんな俺を彼らは嫌う。

特別目立つところなんてないのに。

俺を嫌っている人はみんな幸せそうだ。


俺はなんで生まれてきたんだろうな。

そして俺はなぜあの子を救えないんだろうな。

今でも後悔が残ってる。

最後の彼女の笑顔と共に。


何度も人に裏切られてきた。

馬鹿正直な俺がいけないのか。

それともこの世界が腐っているのか。


戦争は無くならない。争いは絶えない。


それでも誰かは言う。「人を愛せよ」と。


俺には理解できなかった。

いなくても良い存在の俺が誰かを愛したところで変わるのだろうか。

俺の人生は変えれるのだろうか。


「もういいや。疲れたよ。考えるのは。」



俺はうるさい上の階を無視して布団に篭る。

もういい。

誰も信用できないし誰からも愛されない。

なら腹が減ろうがいずれ死のうがこの

布団に篭ろう。いつまでも眠りにつこう。

涙に濡れた布団をかぶって。







眩い光に起こされる。


「お主は今の人生に満足しているか?」


(しているわけがないだろ。じゃなきゃ夜に毎回、涙を流す必要なんてないんだよ、)


「それは人を愛していないからだ」


(人の愛し方なんて習わなかった。)


「時として状況や環境を変えれるとは言わん。が、人を愛せば自分は変えられるはずだ」


(さっきから「人を愛せ愛せ」うるさいんだよ、もう放っておいてくれよ。

人はもううんざりだよ。頼むから...)


「では人をやめろ。それでいい。だがそれが

出来ないのだから辛いのだろう?」


その通りだった。

こんな人生だとしても投げ出すのは怖かった。

死は怖いし、消えてしまうのも怖い。


「お主に試練を与えよう。例えお主が人間ではないとしても人のように他者を愛するのだ。

お主に幸運あれ。そして人に愛情あれ」








「きゃあああ!」


眩い光と女の叫び声によって起こされる。

古いレンガ作りの天井が上には見える。


「貴様!こんなものを産みよって!!」

「違います!私は誓って貴方様を...」

「おい!お前!この女とこの

追い出せ!我が家に近づけるのではない!」


知らない男に首を掴まれる。苦しい。

あぁ。悪魔とは俺のことなんだな。


「待ってください旦那さま。私は私は...」

「ええい。近づくな。呪われたくはない!」


彼女は俺を睨みつける。


「お前が、お前なんかが生まれなきゃ!私は

幸せだったのに...!」


生まれ変わっても俺は嫌われ続けるのか、

どうやって人を愛せるのだろうか。


俺は女と共に薄暗い森に連れて行かれる。

そして一人分しか歩く音が聞こえなくなった。


「私は必ず幸せになってやる!お前なんか知るか!!」


俺を投げ、足早にどこかへ行ってしまう。

赤子の体のせいで起きあがろうにも起き上がれない。

言葉も話せない。

食べ物も自分で取れない。


どんなに人生に諦めていたとしても死は怖い。

どうしようもない怖さで押し潰されそうになる


「(助けを求めよ。弱き者こそ助けを求め、強き者こそそれに応えるのだ)」


どこからか声が頭の中で響き渡る。

言葉も発さない俺がどうやって、


茂みの奥から獣の臭いが近づいてくる。

息遣いが荒い。

俺は食われてしまうのだろうか。


死にたくない。死にたくない。


(頼むから、俺を助けてくれ。頼むよ)


俺必死に心の中で呟く。


「珍しいものを捨てる人がいるものだ」


獣の臭いが遠のいていく。


視点がいきなり高くなっていく。

どうやら持ち上げられているようだ。


目の前には美しい女性が写り、顔が近い。

その女性は俺に優しく微笑みかけている。

良い匂いと共に彼女の口がが開く。



「私と同じで孤りか。ならば私と来い。」









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