20cm先の君へ

ちょき 和

第1話 

 長距離、短距離問わず走るのは好きだった。追い風でも向かい風でも走っていると気持ちよかった。空が赤くなれば大きな緑地公園に行って、公園内を何周か走る。僕にとってはとにかく楽しくて、家族のみんなにも勧めたりもしたっけ。お父さんもお姉ちゃんも嫌がった。お母さんとは何回か一緒に走りに行ったけど、4回目くらいでもう疲れた、もう走らないって息切れしながら言ってきた。僕は一人だったけど、雨の日以外は毎日走った。

 ほぼ毎日走っていたのは覚えている、いつそれを辞めてしまったのか思い出せない。何故やめたのかもはっきりしない。小学生高学年ぐらいには、マラソン大会の直前とか運動会の直前以外、走りに行くことはなくなった。走ることに理由がないとやる気になれなくなってしまった。別に走るのが遅いわけでもないし、走るフォームがダメなわけでもない。ただ走ることを含めた運動そのものに煩わしさを覚えてしまった。そんなだったから中学に入って、部活勧誘を受けても、気乗りしなかった。とはいえせっかく勧誘しもらったし見学に行くことにした。見学では、擬似体験だったり先輩たちと話したりできて楽しかった。でも正式に入部して打ち込もうとは思えなかった。

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