悪徳貴族に買われた俺は、世界の命運をかけて迷子を魔王城まで届ける事になりました⁈

一二三 一八

プロローグ



ダンジョンの中に、とある1組の男女の冒険者パーティーが歩いていた。



男の方は、ボロボロの服に皮装備を着け、腰には直剣ロングソードを下げた、いかにも初心者のような身なりだった。



女の方はというと、まるで何処かの貴族かのような意匠が施されたバトルドレスに、男と同じように腰には武器である細剣レイピアが下げられている。



傍からしたら、初心者を連れた熟練冒険者のようなちぐはぐなパーティーのよう見えるだろう。もしくは同業の好として、後輩にレクチャーしている優しい先輩のようにも映るかもしれない。



「レイラ、目的地まで後どれくらいだ?」


「このまま、まっすぐ歩いて行けば着くはずよ……ジーク」



男をジーク、女をレイラと呼び合う彼らは、ギルド依頼を達成するためにダンジョンに潜っていた。







<新エリアの探索>という、依頼を受けた俺はパーティーメンバーと共に、目的地であるダンジョンの5層目へとやってきていた。



「ジーク、この先に罠が仕掛けられてるわ。引っかからないよう、端を歩きましょ」



と、忠告してくれた彼女、レイラはとある約束のためにパーティーを組み、共に冒険をしている。



「了解」



と、軽く告げる。



元々、レイラは各地を旅していたらしく、博識な彼女は、冒険の最中俺に色々な知識を教えてくれる。頼もしい限りだ、俺がレイラと約束した目的を叶えるのにも何ら問題ないだろう。



その後も、順調に探索を進めていた俺たちは、ある部屋へと辿り着いた。

部屋の中には、宝箱が一つポツンと置いてあるだけであった。



「罠です!」と今にも喋りだしそうな、目に見えてわかるトラップに誰が引っかかるのだと呆れてしまった。



「どうやら、行き止まりみたいだな。いったん、もどt……」



レイラも罠だと気づいていることだろうと思い、俺は彼女に引き返そうと提案をしよとしたとき……



「あら、こんなところに宝箱があるじゃない!早速開けましょ?」


「……あれ、おかしいわね?何も入ってないわ」



と、俺の言葉を遮り、何の警戒もなしに宝箱に近づき、躊躇なくその箱を開けるレイラの姿に頭の理解が追い付かず固まっていると……




ガコン!




宝箱の後ろの壁が突如として開いた。




……ご……ゴロ……ゴロゴロ




段々と音が近くなるように、転がってきた岩を見た俺たちは、一目散に逆方向へと走り出した。



「ば、バカなのか?あんな、あからさまな罠に引っかかるなんて!」


「俺の、尊敬してた気持ちを返してくれ!」


「ッ。……だって、しょうがないじゃない!そこに宝箱があれば、開けたくもなるじゃない!」



そんな、子供が親に言い訳するみたいな発言をするレイラと俺は、すぐ後ろまで迫っていた岩から必死に逃げていた。




……前言撤回だ。俺は、これからの冒険が前途多難であることに気が付いた。



昔の俺よ、なぜ……あの時レイラから持ち掛けられたあの約束を、いとも簡単に了承してしまったのか、俺は少し後悔していた。



そんな約束とは……



レイラを、彼女をまで送り届けることだった。



俺たちが、今から行こうとしてるのは仮にも魔王城。こんな調子で本当にたどり着かるのか、俺は不安で仕方なかった。



(父さん、母さん。俺が、そちらに行くのも近いかもしれませ……)



今は亡き両親の姿を思い浮かべ、縁起でもないことを思った。






そしてこれは、そんな一つの約束から始まった、世界をめぐって巻き起こる、俺たちの冒険譚だ。






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