28 おはようございます。お姫様(プリンセス)。
おはようございます。お姫様(プリンセス)。
長い眠りから目を覚ましたまめまきは携帯用の食料(スティック状の固形食品)を食べると大きく背伸びをした。それから銀色の水筒をとりだして(痛み止めの薬と一緒に)水を飲んだ。(ひかりは目を覚ましていて、家の中で掃除とかものの手入れとか、いろんなことをしていた)
まめまきはひかりにお願いをして、自分のピンク色のリュックサックの中にある医療キッドの箱から新しい包帯と薬を取り出すと、古い包帯をとって、消毒をしてから、傷薬を塗り、その新しい包帯を巻きなおす作業を手伝ってもらった。(ひかりはうれしそうに、そのまめまきの傷の手当てを手伝ってくれた)
顔の古い包帯をとったあとで、傷の様子がよかったので、顔には新しい包帯を巻きなおすことはしなかった。そのかわり、ジラはその左目のところに白い眼帯をつけた。(左目の痛みが思ったよりもずっと強かった)
それから自分の黒のスパイ服をさりげなくなにかの仕掛けがされていないか、すみずみまでチェックをしながら(ひかりのことを疑っているわけではない。スパイとしての癖のようなものだった)着た。
ぴっちりとした(体の形がしっかりとわかる)特殊繊維のスパイ服を着ると、なんだか気持ちがとても落ち着いて、いつもの自分に自然と戻ることができた。(よかった)
ひかりはいつも座っている木の椅子に座って、そこから足をぶらぶらさせて、ずっと出発の準備をしているまめまきのことをその綺麗な星のある瞳で追っていた。(ひかりはよくそうしていた。瞳で誰かの動きを追い続けることは、ひかりの癖なのかもしれなかった)
本当はまだ体は痛くて仕方がなかったし、もっとぐっすりと(ふわふわのベットの中で)寝ていたかったし、あったかいシャワーをいっぱい浴びて、洗いたての太陽の匂いのするふかふかの服をきて、空調のきいた部屋の中で冷たいオレンジジュースでも飲みたいところだけど、もちろん、文句は言えなかった。(まあ、仕事中だし)
「みちびき。この場所はどこ?」
銀色のイヤリングを軽く揺らしてから、まめまきは言う。
『おはようございます。まめまき。現在の場所は、正確な位置は不明ですが、幽霊の街の地下、その中心部付近だと推測されます』とみちびきは言った。
みちびきはまめまきが命令しなくても、ずっと情報収集を続けていたはずだ。そのみちびきからまめまきに対して緊急の報告はなかった。妨害電波があったから絶対とは言えないけれど、まめまきが気を失っている間に、とくに(報告のいるような)問題はなかったようだ。
「私が眠っていた時間は?」
まめまきは言う。
『およそ、十二時間ほどです』
みちびきは言う。
……十二時間。半日か。思っていた以上に、時間を消費してしまったな。無事に心と体が動く状態を維持できていることはよかったけど、……まずいな。としっかりと自分の靴を履きながらまめまきは思う。
そんな風にしてまめまきが右耳にしている銀色のイヤリングの中にいるみちびきと会話をしていると、(そのみちびきの声は、ひかりにも小さくだけど聞こえている)その様子をひかりは空中で足をぶらぶらとさせながら、好奇心旺盛といったようなわくわくした表情をして、いったいまめまきさんは誰とおしゃべりをしているのだろう? と思いながら、ずっとその綺麗な瞳で見つめていた。
「あのあと、私はどうなったの? あの大勢のロストチャイルドたちは? 私が気を失っている間の記録は取ってあるんでしょ?」
胡桃色の美しいふわふわの髪をかきわけたあとで、自分の長い髪をポニーテールの髪型にしながら(眠っている間、まめまきの髪は黒色のリボンがとかれたままになっていた)まめまきは言う。
『それが記録はありません。消失しています』とみちびきは言った。
「消失?」手を止めて(ちょっと変な顔をして)まめまきは言う。
『はい。消えています。おそらくですが、あの地下を覆っている妨害電波のような力場の影響だと思われます』冷静な声でみちびきは言う。
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