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「私の脚力で、向こう側までジャンプできるかな?」まめまきは言う。
『おそらく、無理でしょう』みちびきが言う。
「……そっか。わかった」
まめまきはすぐに自分の意見を引っ込めると、一度、崖の向こう側の闇をじっと、まるで猫のように睨みつけてから、その場に立ち上がり、ポケットから小さな丸いコンパスを取り出した。
しかし、蓋を開けると、コンパスはぐるぐると回転しているだけで、その道具としての役目を果たしてはいなかった。
念のため、腕時計で時刻を確認してみると、まめまきのお気に入りの(お誕生日にご褒美として買った)可愛らしいおもちゃのような(文字盤のところにデフォルメされたうさぎの絵が描かれている)腕時計はいつの間にか、その時間を測る機能を止めていた。
「ふー。なるほどね」
まめまきはそう言って、両手を軽く上げながら、小さなため息をついた。
『どうかしましたか? まめまき』
「なんでもないよ」
まめまきは言う。
それからまめまきは、崖のふちから少し距離をとった場所を、崖の穴の横を通るようにしてまた砂漠に吹く風のような速度で走り始めた。
移動する方向は自分のかんで決めた。
それからしばらくの間、静かな闇の中を小さな手持ちライトの明かりだけを頼りにしてまめまきが走り続けていると、ふいにみちびきが『まめまき。目的地が近いようです』とまめまきに声をかけた。
まめまきは足を止めて、ライトの明かりを切った。
それで世界は真っ暗闇に包まれた。
まめまきは一度、その場で深呼吸をして、それから天上に輝く一つの星の光を眺めた。それからジラは、暗闇の中を静かに、ゆっくりとした足取りで前に前に歩いていく。
するとしばらくして、ぼんやりと、まめまきの見る暗い大地の上に、幾つかの光る星の光が見え始めた。
まめまきの開けた天上に光る星の光ではなく、不思議な地上で輝く地下の星々の光。でも、その星々の光には、(確かに綺麗ではあるけれど)まめまきの開けた天上に輝く星の光のような純粋な自然の美しさのようなものは感じられなかった。
それはまちがいなく、人の作り出した人工の光だった。
「あった。……情報通りだ」
と、足を止めて、まめまきは言った。
『はい。まちがいありません』みちびきが言う。
「あれが、幽霊ホロウの街だ」
なんの感情もない声でまめまきは言った。
すると、地下の世界に吹く氷のように冷たい風が、まめまきの美しい胡桃色をしたポニーテールの髪を揺らした。
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