花は散ってもまた咲き誇る

額田兼続

第1話

「ただいま」

私、神谷かみや真射まいは玄関の戸を開けながら言う。

「おかえり」

兄さんはちょうど着いたらしく、鞄を下ろしていた。

「兄さん?早くない?」

私が兄さんと呼んだこの人は、射手園いてぞの真樹斗まきと

兄さんは戦国武将、伊達だて政宗まさむねの生まれ変わり。私は、その伊達政宗の従妹であるこま

(伊万いま)の生まれ変わり。

今世でも従兄妹だ。

「ああ。ちょっと体育館で殺人事件起きたらしくてさ。警察がいるから入んなって。部活なかったからな」

「それ、詳しく聞きたい。後、部活ないのにしては遅くない?」

「多分ニュースでやってるぞ」

部活の件は?

そう思いながらテレビのリモコンを手に取ると、もうすでに電源はついていた。

テレビは幼児向け番組「あそぼ」を放送していた。

「あれ、兄さんあそぼ見てんの?高校生なのに?」

「ん、んな訳ねーだろ、馬鹿。テレビの電源つけっぱなしで出発しちまったからこの番組になってるだけだ」

やめてください。

ニュース番組に切り替える。

「…す。午後2時頃、K県の私立高校、陽輪高校の体育館で校長、蔵野くらのきよしさんが殺害されました。」

早速やってた。

「校長先生!?」

「ああ。犯人は校長の孫で俺の同級生、蔵野くらの洋一よういちだった。優等生で、そんなことする奴じゃないんだけど…」

顔を曇らせて兄さんは話した。

私は洋一君の話は聞いたことがある。

兄さん、「洋一とは仲が良い」って言ってたし。

いつもの話を聞く限り、確かにそういう事する人じゃない。

「洋一君って校長先生に嫌がらせされてた、とか無いの?」

「あるよ。蔵野はうるさいが、特に洋一に厳しかった。それに対して洋一の姉、洋子ようこは溺愛されてたよ。ちなみに洋子は洋一を虐めてた」

「そっか…洋子さんはどうなの?」

「無事だよ。洋一は多分、洋子に精神的ダメージを与えたかったんだ。洋子はお嬢様だからな。結局、洋子は自殺したよ」

「そっか…」

テレビの方を振り返ると、「犯人の少年の性格」と言って、同級生に取材していた。

その中には…

「兄さん!?」

「ご名答〜」

なんで!?

「俺、仲よかっただろ?」

いや、そうだけど…

っていうか名前記載されてるし!?

「ふっふっふ、テレビに出た俺は有名人に…」

「高校の関係者以外は兄さんの名前なんか興味ないと思うけど。っていうか兄さん、もう伊達政宗として有名じゃん」

「そーだけどさぁ…」

テレビを見る。

「洋…犯人の人とは、仲良かったんですけど、爺ちゃんと姉ちゃんに虐められてる、とは言ってました。でも彼は優等生で、俺以外とはあまり絡みませんし、そんなことする奴じゃないです」

と話していた。

「言いかけてんじゃん」

「一、まで言ってないからセーフだろ」

「アウトだよ?」

「えー」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

花は散ってもまた咲き誇る 額田兼続 @Nekofuwa-jarashi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ