第18話:才能

「調子はどうだ?」


「ま、まさか君が……? エリアボスを倒したのも……⁉︎」


「怪我を治したのは俺で、魔物を倒したのはこっちのミリアだ」


「……っ⁉︎」


 ギョッとした感じで俺を見るシオン。


 うん……?


 丁寧に説明したつもりなのだが、伝わらなかったか?


 もう一度説明しようとしたその時だった。


「あ、ありがとうございました‼︎」


「お二人は命の恩人です!」


 シオンの仲間の二人が頭を下げてきた。


 そして、立ち上がったシオンも俺たちに頭を下げてくる。


「さっきは悪かった……! 酷い暴言浴びせちまった。まさか、新人がこんなに強いとは思わなかったんだ。助けてくれて本当にありがとう。頭が上がらねえよ……」


 普通の新人冒険者を基準に考えれば冗談を言っていると思われても仕方なかった。


 この人たちは謝るほどのことはしていないと思うのだが、俺も逆の立場なら……と想像すると気持ちは分かる。謝罪とお礼の言葉は素直に受け取っておくとしよう。


「どういたしまして。それと、もう過ぎたことは気にしないでくれ」


「そうですよ。みんな無事で何よりです!」


 このように答えると、シオンたちは感動している様子だった。


「君たちは本当に心が広いな。俺はシオン。こっちはリーンで、この子がシーアだ。名前を教えてもらってもいいか……?」


「俺がレイン・シャドウで……」


「ミリア・シャドウです」


 俺たちが名乗ると、シオンは少し驚いたようだった。


「ってことは、レインとミリアは夫婦なのか⁉︎」


「実はそう——」


「違う。たまたまだ」


 俺とミリアは顔を見合わせる。


 何か、ミリアが奇妙なことを言いそうになった気がするのだが気のせいか?


 まあ、いいか。


「なるほど、そんなこともあるんだな。ところで実は俺たちはこう見えて、結構顔が広いんだ。戦闘面ではもはや役に立てないが、それ以外で何か困ったことがあったらなんでも相談してくれ」


「それ、めちゃくちゃ助かるよ。その時はよろしく頼む」


 俺とミリアは戦闘能力だけなら全冒険者の中でも上位に位置することは確実。だが、知識や伝手といった面では他の新人冒険者と何も変わらない。


 もしかすると今後、シオンたちとの繋がりは何かに役に立つかもしれない。


「そういや、レインたちはどうしてエリアボスがここにいるって分かったの?」


 シオン仲間の一人、リーンが尋ねてきた。


「俺は回復術師だから、魔力には敏感なんだ。強い魔力を探知したから来てみたら、案の定って感じだな」


「た、探知⁉︎」


「それって、勇者パーティのレグナ様と同じスキルじゃ⁉︎」


 リーンとシーアが驚く。


 そう言えば、『Sieg』のシナリオでは勇者パーティの回復術師も同じことが出来たな。


 ゲームなので、プレイヤーキャラクターは画面右上のナビゲーションマップから魔物の位置を把握できたし、特別なこととは思っていなかったが。


「さっきの回復魔法でも思ったが……やっぱりとんでもない才能だな。シオン、お前は絶対ビッグになる。この年でこれなら、勇者様の比じゃねえ」


 なんか、めちゃくちゃ褒めてくれているな。


 ちょっと照れるじゃないか。


「ま、まあ……立派な冒険者になれるように頑張っていくよ」


「ですね!」


 こうしてシオンたちを助けた俺たちは、さっき倒したエリアボス『レッド・ドラゴン』をアイテムボックスに回収して、ノーブル山を後にしたのだった。

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