S級探索者はスーパーなロボットを駆使して戦う。
水国 水
第1話 アルファライザー推参ッ
「なんで……こんな場所にいるんだっ!」
全身から血が流れているのが感覚でわかる。頭もぼーっとしてきた。片足は思うように動かず、もう走れないかもしれない。
私はここで死ぬのだろうか。
嫌だッ!
踏みしめる度に感じる痛みに耐えながら、必死に走り続ける。
:
:逃げてッ!
:もう無理、見てられない
:Aランクはやばい
:ギルドが救援に行くって! だから頑張ってくれ!
視聴者数が数万へ増え、コメントがどんどん書かれていく。
フェンリル。それは現実では幻想の生物だろう。しかし、ダンジョンには生息しているのだ。Aランクに分類され、相当な実力者と言われるA級でも単独討伐はできないと言われている。
B級になったばかりの私じゃ太刀打ちできない。そう思い、視界に入れた瞬間来た道を引き返した。
だが匂いでバレたのか、それからずっと追いかけられている。
まだ、走る音が聞こえてくる。早く諦めてよっ!
B級になったことで慢心していたのだろうか……。初めてのフィールド型ダンジョンとはいえ、脅威度は低いと考えていた。
いつの間にか、ダンジョンは何が起きるか分からないということを忘れていたのかもしれない。
前を向き、生き延びるため走り続ける。
:どこか隠れる場所へ!
:無理だ、フェンリルだぞ! 匂いでバレる。
:誰か助けてくれー!
:探索者協会にからの発表でS級が向かうって!
「S級が!?」
S級探索者。『人外』『人間じゃない』と呼ばれるくらいには強い人たち。そんな人が向かってくれていると知り、少し希望が見えた気がする。
まぁ、今を生き延びなければそれも幻想となってしまうんだけどね。
私は気合を入れ直し、木々の合間をすり抜けるように走る。
だが目の前に広がるは、見渡す限り広大な平原。これ以上進んでも身を隠すものは一切ない。
「まずいね……」
そう思ったが、ここで足を止めていてはそれこそ死んでしまう。そのためスピードを落とさずに平原へと出る。
が、それは悪手だった。
背後から飛び出してきたフェンリルが攻撃を仕掛けてきたのだ。
攻撃を遮る木がなくなったからだろうか。
「ぐっ」
魔力の揺らぎでなんとか反応することができたが、バランスを崩し転倒してしまった。
:やばい!
:早く立って走って!
:にげて!
私の周囲を飛ぶドローンには目もくれず、迫ってくるフェンリル。
ここまで……なのかなぁ……。
走馬灯のようにこれまでの探索者生活が頭をよぎる。
眼前に迫るフェンリル。
反射的にギュッと目を瞑った。
しかし、いくら待ってもその瞬間は訪れない。代わりに轟音とフェンリルの呻き声が聞こえてきた。
「何……?」
恐る恐る目を開き、前を見てみる。
そこにいたのは————大きな鉄の塊? 人型のナニカ。私の知らないものだった。
それと対峙するようにフェンリルが、さらに奥で唸ってる。
:メカ?
:でもここダンジョンだぞ
:いや魔物には見えない。ゴーレムにしては大きくて、造形が細かいぞ?
:まるでスーパーロボットだな
目の前に佇む巨大なメカ。
おそらくフェンリルを殴ったのもこのメカだろう。そして私の方へ視線を向けてきた。
動いたことで私は反射的にビクッと驚いてしまったが、そんなことも気になってない様子で視線をフェンリルが飛んでいった方向へ戻した。
怖かったが、不思議とそのメカがフェンリルに負ける印象は感じられなかった。
◆◆◆
ダンジョン。
それはこの世界に突然現れ、新たな脅威、資源をもたらした現象だ。
ダンジョンの入り口は地下への階段のような作りをしている。が、実際に地下に存在するわけではなく、別次元に存在し、そこには生態系が構築され、空があり、風がある。
別世界のような場所だ。
また、それぞれのダンジョンが繋がっている訳でもなく、個別の次元を生成している。
その内、一つのダンジョンで俺は生活している。
ダンジョン内でも問題無く、生活ができるように俺が改良した場所、山の内部。
格納庫にて————。
俺は左右のボタンやスイッチを操作し、システムを起動。
正面のディスプレイに光が灯る。そして正面と左右に景色が映る。
コックピット側面に備え付けられた複数のスイッチ。それを決められた手順で押すことにより、コアとなる場所から魔粒子エネルギーが送られ、すべての装置が動き出す。
聞き慣れた機械の起動音がコックピットに響く。
また、ディスプレイから別の操作をすることにより、隔壁を遠隔で展開する。
ディスプレイに表示されたメーターの上限まで色が付く。
魔粒子エネルギーが最大まで貯まった証だ。
操縦桿を前へ押し込む。
「アルファライザー発進ッ!!」
正面の壁が開く。
ダンジョン内の山に作った俺の基地。そこからすぐに発進できるよう改造した場所だ。
そして飛び出す。
「いい感じだぞ! 試しに————」
レーダーに映る魔物に狙いを定め、剣を取り出す。
「ブレイブソードッ!!」
そして急降下し、着地と同時に斬りつける。
「グギャ」
断末魔を上げ、魔物が真っ二つになった。
「うん、絶好調だ。」
他に性能実験ができるような魔物は居ないか、調べていると別のダンジョンにて
特殊個体————別名イレギュラー、それはダンジョンの気まぐれともいうべきか、出現場所もいつ出現するかも謎に包まれており、毎回通常の個体より数倍の強さを保有した魔物が現れることだけ分かっている。
今回はフェンリルが出現したようだ。
探査者協会も『討伐するまで当該のダンジョンには入らないように』と注意を促しているようだ。
「ん? フェンリル……
俺は即座に行動に移し、件のダンジョンへ移動するため、人型形態から飛行形態へ変形する。
「チェンジ! フライトモード!」
そしてダンジョン間を移動するための特殊兵装である次元跳躍を起動する。
「次元跳躍開始っ! 目的地、渋谷ダンジョン」
手元にあるボタンから指定のコマンドを打ち込み、発動する次元跳躍。その名の通り、次元を跳躍するため、ダンジョンごとに存在する次元へ跳ぶことができるのだ。
周囲の景色が変わり、光に包まれる。そして光が収まった頃には渋谷ダンジョンへと到着していた。
「さて、レーダーによると————あっちか」
ディスプレイに赤丸が一つ出現。斜め右前方に大きな魔力反応があることを示している。
もうすぐ目的の平原が見えるといった時、前方から爆風が襲いかかってきた。
「おっと、危ねぇ。誰かが戦っているのか?」
おそらく今のは、フェンリルが攻撃を仕掛けた際の余波だろう。
フットペダルを踏み込みスピードを上げる。
魔粒子センサーの感知する対象に人間を追加する。
すると、フェンリルと対峙するように青色のマークが出現
進むにつれて徐々に全貌が見えてくる。
そこには今にもフェンリルに噛みつかれそうな女の子がいた。
「チェェェンジ! アルファライザーッ!」
飛行形態から人型形態へ変形。
そして、勢いそのままにフェンリルを殴りつけた。
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最後までお読み頂きありがとうございます!
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