学園で人気な幼馴染が、俺と付き合い始めてから、エッチな誘惑をしてくるようになった⁉
譲羽唯月
第1話 誘ってくる幼馴染と付き合い始めた日
幼馴染は、見た目の雰囲気もよく、可愛らしい。その上、人当たりが良く明るい性格なのだ。
友人関係が広く、高校生になってからの彼女は変わったと思う。
昔からの仲だったとしても、和弦は高校生になってからは、幼馴染と殆ど関わらなくなっていた。
一応、同じ学校に通っているが、クラスが違い、今では関わる友人関係も変化していて、別々の日々を送っている。
中学の頃までは一緒に遊ぶ事も多かったが、たった数年で大分変ったと思う。
幼馴染には沢山の友人がいるのに、和弦ときたら高校生になった今でも陰キャであり、未だに恋人の一人でも出来ていなかったのだ。
そろそろ、恋人が欲しいと思っているのだが、なかなか作るのは難しいと痛感していた。
そんな事を考えながら、和弦は一人寂しく、校舎の中庭の大きな木の下にあるベンチに座り、食事をとっていたのだ。
「寿崎先輩は、今一人ですか」
「な、なんだ、急に⁉」
昼休みの時間帯。
和弦は背後から突然話しかけられたのだ。
驚くあまり、手にしていたパンを地面に落としそうになっていた。
「そんなに驚く必要ありますかね?」
「お、驚くよ。そりゃ、急に話しかけられたらさ。それで、何か用なのか?」
「そうです。何か用事があったから、ここに来たんです! そもそも、寿崎先輩が一人で寂しそうにしているから、私がいつも話し相手になってあげてるじゃないですか!」
ツインテールな髪型が似合う後輩――
小柄な体系であり、幼っぽさも残るが、意外としっかりとした年下の子。
彼女とは少し前から関わり、そこまで親しい関係ではないが、話しやすい感じだった事もあり、昼休みの時間帯にあると、こうして関わっていたのだ。
「いつも一人だと寂しいですよね?」
そう言って、後輩は和弦の隣のベンチに腰を下ろしてきたのだった。
「それで、寿崎先輩はさっきから何を見てたんですか?」
「別に、何も見てないけど」
「そんなことない気もしますけどね。さっきから、あっちの方に視線を――」
後輩が指さしている場所には、幼馴染の
そして、その幼馴染の周りには友達らしき人までいたのだ。
楽しそうに会話しているのが伺えた。
「もしや、寿崎先輩って、あの人の事が好きとか?」
「い、いや、そうじゃないし。そもそも、俺には、か、関係ないし」
和弦は後輩の話を遮るようにパンを食べ始める。
「でも、そんなこと言って、少し顔赤いですよ?」
「違う、それとこれとは」
和弦は、後輩から突拍子のない事を言われ、咽てしまう。
「はい、これ、お茶です」
「あ、ありがと……なんか、気が利くな」
「それはいつもの事ですから」
後輩は笑顔を向けてきたのだ。
そんな姿の後輩に対し、変にドキッとしてしまっていた。
そもそも、後輩とはただの友達みたいな関係なのだ。
まさか……六花は、俺の事を意識しているとか?
まあ、それはないか。
「そういや、俺、午後は移動教室なんだ」
「そうなんですか、それは残念です。もう少し会話したかったんですけどね」
六花はつまらなそうに、不満を零していたのだった。
その日の放課後。
和弦はいつも通りに教室を後に、昇降口まで移動していた。
下駄箱で外履きに履き替え、外に出る。
「あれ? 和弦?」
え?
その時、聞きなれた声が和弦の耳元まで届く。
「紬?」
「和弦って、今から帰り?」
昇降口を出たところで、ショートヘアスタイルが特徴的な幼馴染――紬とバッタリと出会った。
昔から変わらない髪型で、彼女と関わると不思議と安心するのだ。
「そうだけど」
「じゃあ、私と遊ばない?」
紬は笑顔で誘ってくる。
そんな笑みに、和弦の心が靡きそうになっていた。
「暇?」
「確かに暇だけどさ」
「じゃあ、問題ないね」
彼女は和弦の左手を掴んできた。
急な出来事に、和弦は驚き、手を離してしまう。
「ご、ごめん」
「い、いや、俺の方こそ。ど、どうしたんだ? 手を繋ごうとして」
「そんなに変な意味じゃなくて」
変な空気感になる。
黒いオーラが二人を包み込んでいるかのようだった。
「で、でも、和弦が嫌だったら強制はしないから。ごめんね」
紬は笑顔で、この場の空気感を吹き飛ばそうとしている。
彼女に気を遣わせている事に、心が痛む。
「でもさ、どこに行くの?」
「街中だけど」
和弦は少し考えた。
ここで彼女の誘いを断る必要性はない。
むしろ、積極的になった方がいいと思った。
だから和弦は、彼女と学校を後に、街中へと向かって行く判断をしたのであった。
「この頃、どう? 良い感じ?」
通学路を歩いていると、隣にいる紬から問われた。
「普通かな」
「普通って、どういう意味かな? 変わりないって事?」
「そうかもな」
「そっか」
幼馴染はちょっとばかし考え込んでいた。
和弦は道を歩きながら、そんな彼女の横顔を見ていた。
高校生になってから距離感があったが、今はこうして一緒に遊ぶことになったのだ。
まさかとは思うけど、俺の事を気にかけてくれているとか?
そんな都合よく話が進んでいくわけがないと思いながらも、普段の高校生活に絶望しながら、ため息をはいていた。
「じゃあ、今日は変わった事しよ!」
閃いた顔を見せる紬から笑顔で提案を受けるのだった。
紬と会話していると、時間が経つのは早いモノで、気づいた頃には街中に到着していた。
街中のアーケード街に入り、そこからウインドウショッピングするかのように数分ほど歩く。
「ここに入ってみたかったんだよね」
紬が指さすところには、喫茶店がある。
「入らない? 和弦はお腹減ってる?」
今日の昼は、購買部で購入したパン一つだけだった。
夕方の今、少しだけお腹が減っているのが感覚的にわかる。
そんな中、彼女が距離を詰めてきたのだ。
「ねえ、お腹減ってる? 減ってないの?」
急に距離を詰められ、彼女から再度言われた。
しかも、紬との顔の距離が近く。その上、彼女の胸元が、和弦の肩らへんに当たっているのだ。
なんか、今日の幼馴染の様子がおかしい。
以前の彼女は友達のような感じに会話してくれる程度だった。
ここ一年ほど関わっていなかった事もあり、彼女の雰囲気が変わったのだろうか。
そんな疑問を抱きながらも、お腹が減っているから入ろうかと、和弦は一言だけ呟き、返答するのだった。
店内に入ると、落ち着いたBGMが流れていた。
周りを見渡すと、来店しているお客はそこまで多くはない印象。
和弦と紬を含めても、両手で数え切れるほどだった。
「意外と少ないモノなのか?」
「この時間帯はね。ここの喫茶店って朝と夜で少しメニューが違うの。だから、今の変わり目の時間帯には、そこまで人が多くないかもね」
「へえ、そうなのか」
「どこか空いてる席に座りましょ」
基本、自由席のようだ。
二人は窓際の席に座る事にした。
向き合うように座るなり、店の奥から店員の二十代くらいの女性が現れ、水が入ったコップをテーブルに置いてくれた。
「ご注文が決まりましたら、お声がけお願いしますね」
若い女性店員はニコッと笑みを見せ、それだけ言って店の奥まで立ち去って行った。
テーブル上にはメニュー表が置かれてある。
和弦がそれを見ていると――
「和弦って、付き合っている人っているの?」
「え? な、なんだよ、急に」
「ちょっと気になって。でも、和弦がいいなら、付き合ってほしいなって」
「俺と? なんで?」
「なんでって、別に理由なんている?」
「いや、何かさ、紬とは」
「嫌なの?」
「そうじゃなくて」
変に話すと空回りばかりして、言葉が変な方向性へと傾きつつあった。
幼馴染の紬は学校内でも、モテる方なのだ。
それなのに、こんなパッとしない俺に告白なんて。
「私、和弦との約束覚えてるからね」
「え?」
「だって、昔さ。小学生の頃、高校生になったら付き合おうって約束してたでしょ?」
そんな昔の事まで覚えているのか。
確かに、そんな約束をした。
和弦は今、過去を振り返り、その記憶を思い出していたのだ。
高校生になってからクラスも違い、人間関係も変わり、全然関わることがなくなっていた。
むしろ、幼馴染の方が忘れているのだと思っていたくらいだ。
昔約束していた事を互いに覚えていた事に、和弦は不思議と嬉しさが混みあがってくる。
和弦は軽く笑みを見せた後、紬と付き合う意思を示すことにしたのだ。
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