第5話 ※今回は少し長めです。

 おれの名前はでんきアラシ。ちきゅうの磁器を狂わせてやる。


「あのぉ〜。アラシくん?」


 カラフルな模様の長い髪の毛、細い肩を惜しげもなく出した白いワンピースがよく似合うこいつはおーろらたんと呼ばれている。


 もちろん、このおれはおーろらたんの身の上を知っちゃっている。


 だからこそ、おれさまに話しかけるこいつが愛おしすぎて憎らしい。


「ぬぁんだ? おーろらたん」

「んふっ。やっぱりかっこいいなぁ。アラシくんは」

「ぬぁ、ぬぁ〜にを言い出す?」

「あのねっ」


 魅力的にくるくると表情を変えるおーろらたんの瞳に、大量の涙が浮かんだ。


 え? あれ? おれが泣かしたってのか?


「ぼく、ちきゅうくんにプロポーズされちゃった」

「そ、そうか。よかったじゃねぇか。おまえみたいなのをもらってくれるってんなら」


 おれの言葉で、おーろらたんの涙はついにこぼれ始める。


「アラシくんのイジワルっ!! ぼくが好きなのは、アラシくんだけなのにっ!!」

「はぁ? え〜!? そんなのはじめて聞いたが?」

「何回も何回も言ってるもん。アラシくんがイジワルなだけだもん!! ぼく、ちきゅうくんと結婚しちゃうかもだよ?」


 ん、まぁ今のところ、たいようフレアたん親子が荒ぶって暴れまくっているらしいから、おーろらたんは自由の身だが。


 もし、たいようフレアたんが疲れ果てて、一休みとかしちまったら? それって、ちきゅうくんとは遠距離恋愛になるのか?


 いや待て。それよりもまず、ちきゅうくんの性格が問題なんだ。あいつはたいようフレアたんをその気にさせておいて、ツキコちゃんにもプロポーズしたという。振られたらしいけど。


「やめておけよ、あんなやつ」


 いい噂を聞かない。


 けど、おれのその想いは、おーろらたんには届かない。


「アラシくんはズルいよ。ぼくが男の娘だと知っていて、そんなイジワルを言うんだからっ」

「ま、待て。おーろらたん。おれが反対した理由はそんなんじゃなくて――」


 幼い頃からずっと一緒に繋いでいた手が、おれから離れる。


「もういいよ。ぼく、ちきゅうくんと結婚しちゃうからっ!!」

「はぁ!? おま、なに言ってるかわかってるの!?」

「わかるよ。アラシくんは、今のところちきゅうくんとしか浮いた話のないたいようフレアたんと結婚しちゃえばいいんだっ」


 いつもふわふわしているおーろらたんから、そんな強い言葉が出てくるなんて驚いて。


 おれは、おーろらたんを引き止めることができなかった。


 つづくっていうのか?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る