お題【炎の夫】、【見てはいけない】、【閉じる】

夜になると蝋燭を灯す。炎がゆらめいて、大きくなって、それは人の形になる。そして炎は蝋燭から抜け出してわたしの前に立つ。炎の夫だ。

私たちはひとときの逢瀬を楽しむ。夫は物を言わないけれどとても優しい。温かな手で私の髪を撫で、私の体を抱きしめる。

蝋燭が短くなる。別れを惜しむように私たちは口づける。最後の別れの時は見てはいけない。だから私はいつも目を閉じる。

じじ、と炎が消える音がする。

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