その婆、要注意人物!③
崔 梨遙(再)
1話完結:1200字
喫茶店の常連客、晴美さん婚活中72歳。とにかく“社長”を狙っている。
そんな時、常連の中川さん男性75歳が言った。
「今度の日曜、俺の友達が来るで! 社長やで! 経営者やで!」
勿論、臨戦態勢の晴美さん。
そして、その日が来た。
先に、堀さん75歳(社長じゃない)が来た。何故か晴美さんが仕切って、
「どうぞ、どうぞ、奥へどうぞ」
と、窓際の1番奥の席へと案内する。社長はバスで来るという情報が入っていた。バスが通れば、その席から見える。1時間に2~3本のバスが止まる度に、堀さんをキープしつつ喫茶店を出て社長を出迎える。が、社長はなかなか来ない。
午後から、堀さんをキープしつつバスが来ると表へ。それを何回も何回も繰り返して……結局、社長は来なかった-! 晴美さん、惨敗。ただ堀さんをマシンガントークでヘロヘロにしただけだったぁ-!
しかし、その社長には妻子がいる。その情報は晴美さんも知っている。晴美さんは、何を考えていたのだろうか?
また或る日、某企業の役職者50代が2人やって来た。その時も、何故か晴美さんが仕切って、
「どうぞ、どうぞ、奥へどうぞ」
と2人を窓際の奥の席に案内した。最初は2人も“コーヒー1杯どうぞ”と、紳士的だった。晴美さん、コーヒーを飲む。
だが、晴美さんのマシンガントークに次第に耐えられなくなったようで、3時間を超えたところで2人は言った。
「あんた、いつまで喋ってんねん?」
「ずっと喋ってるなぁ!」
2人を不快にさせた晴美さん、ママさんに言った。
「今日、私はコーヒー代を払わなくてもええんやろ?」
「いえ、払わなくていいのは1杯分だけですよ」
晴美さん、撃沈!
また、或る日。たまにしか来ない40代から50代の男性3人組(妻子あり)を奥の席に案内した晴美さん。堂々と3人の座るテーブルに自分も座り、何故か話に入っていく。まあ、この場合、流石に男3人で盛り上がるので、晴美さんは全力を出せていなかった。
そして、解散となった時、晴美さんがママさんに言った。
「私、あの3人の中やったら、木下さんやから。おぼえといてや」
その言葉は、何のための言葉だったのだろう? 仲をとりもってくれということだったのだろうか? それとも、“木下さんには手を出すな”というメッセージだったのだろうか? 言葉の意味は、誰にもわからない。
ここまで来ると余談になるが、
まだ摩耶さん51歳が来ていた時、摩耶さんと晴美さんと年配男性の3人でトークをしていた。年配男性はかなり気分が良かったらしく、
「今日は楽しかったから」
と言って、摩耶さんに1万円を渡した。お礼を言って、摩耶さんはお金を財布にしまった。晴美さんは、
「私も半分の5千円を貰う権利があるやろ?」
と、言っていた。
喫茶店が無期限休業になっている今、晴美さんはどこで何と戦っているのだろうか?
その婆、要注意人物!③ 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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