荒鷲は舞う

無名 陸兵

書き出し

 これは、東暦1930年代の物語。

 人が気球で空へと戦略の舞台を展開してから実に136年の月日が流れ、単葉たんようの翼でもって、空が自由の舞台となり始めた頃の話しである。


 世界は未だ、混沌としていた。

 いや、正確には自由の代償を世界の全住民が払い続けていた。


 少し遡って東歴1920年代。

 世界は、一度の世界大戦を経て中近世的な植民地主義からの脱却を果たした。

 それには沢山の血が流れたし、多くの民族が立ち上がっては歴史の闇へと消えていった。

 この年代は後世の歴史書に、自由の年代とも、代償の年代とも称される混沌とした時代として知られる事となる。


 そんな時代だから、世界の歴史を概観するのは非常に困難の連続である。

 そこで、ここに私は、一人の人間に焦点を当てる事で少しでも、この遥かなる空に散って行った『荒鷲あらわし』達にはなむけたいと思い、筆を取ろうと思う。


 全ての荒鷲達に敬意を表し、万人が安らかな自由をその手にせんことを______

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