幸運集めのフォークローバー 28

 いったん合流したのち、すれ違う人々の中に先生や知り合いがいないか確認しながら、気づいたことを孝慈と和歌子にも伝える。

「――それで、加澤の推理は」

 僕の話を聞き終えた孝慈はゆっくりと口を開く。

「先生には、作ったぬいぐるみを渡したい相手がいて、その人は今日の一番の飛行機で遠くに行っちゃうのか。だけど、不測の事態が起きた」

 僕はうなずく。

「ああ。先生は家で猫を飼っていて、せっかく作ったテディベアを引き裂かれた。たぶん、ぬいぐるみを持っていたところに猫が飛びかかってきて、スーツごと傷をつけられたんだ」

「未来写真にあった、袖の引っかき傷ですね!」

「うん。結果的に、テディベアは人に渡せないくらいズタズタになってしまった。

 しかもそれが起きたのはおそらく今朝。

 急いで補修しようとして、先生は空港に間にあわなくなる。

 未来写真に写ってたとおり、スーツのホコリとかも気にする暇もないくらい、急いでいたんだ。

 その結果が、先生がうなだれてるあの写真というわけ。

 猫の毛がついてなかったのは、普段から毛並みを手入れしてたか、あるいは飼ってるのが黒猫とかで、スーツと毛の色がかぶって見えなかっただけかも。

 そして今、僕らの手元には」

 僕は持っていた袋を三人に示し、中のぬいぐるみを取り出した。昨日追い出された後、そのまま持ってきてしまった、稲田先生作のテディベアだ。

「大事な手がかりだから、もちろん持ってきた。稲田先生の代わりに渡せるかもしれないし。だけど、このぬいぐるみは――」

 手足の長さが不揃いだし、顔のパーツもずれている。

 失敗したもの、そう言おうとして、僕は思い直す。なんであれ、稲田先生が頑張って作ったものだ。

「――こうなったら、先生がこのぬいぐるみに込めた気持ちに、賭けてみるしかない」

 そうは言ったものの、空港には人が多く、誰が目的の人なのかは分かりそうにない。

 仕方なく、ぬいぐるみを持ってロビーをうろついていると。

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