幸運集めのフォークローバー 12

 和歌子は首をかしげると、図書館の入り口のほうに駆け出した。

 先に出入口に着いた和歌子は驚いたように言った。

「えっと――、なんだか皆さんも知っている人のようです」

 和歌子の前から歩いてくるその人物は、新しめのジャージを来ていた。見覚えのある黄色いラインの入ったジャージ。

「お前達、奇遇だな」

 僕たちに声をかけたのは、1Aのクラス担任、稲田先生だった。

「やっぱり――。不幸が訪れるのは先生のようです」和歌子は言った。

「え、稲田先生が!?」

「人の顔をみるなりそんなに驚いて……どうしたんだ?」先生が怪訝そうな顔をする。

「いっ、いえ、何でもないです」僕は口をつぐむ。

 その間に、和歌子は先生の後ろに回り込んで、指をカメラのかたちに構える。

 そして、宙に現れた写真を引き寄せて掴んだ。これで未来写真は撮れたらしい。

 それにしても、稲田先生だったなんて。和歌子が撮った写真の内容が気になる。

「早速グループワークか」

 後ろの座敷わらしのことなど知る由も無く、先生は僕たちに言う。

「先生こそ図書館に何の用事っすか」孝慈が聞く。

「あ、ああ。ちょっと、授業で参考にするつもりの本があってな。……じゃ、良い夏休みを」

 歯切れ悪く言い残すと、稲田先生は足早に図書館の二階へと階段を登っていった。

 先生が視界から消えたのを確認して、僕は和歌子に目配せした。

 和歌子は頷くと、今撮ったばかりの写真を取り出す。

 孝慈と松野が先に写真を覗きこんだが、二人はすぐに困惑の表情になった。

「……これだけ?」

 松野が和歌子に確認する。孝慈も眉根を寄せている。

「結人さん、これ――」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る