幸運集めのフォークローバー 11

 一時半。僕たちは歌扇野高校から少し行った先にある市の図書館に来ていた。

 和歌子によると今のところ、不幸の反応はないらしい。

 そこで、不幸の訪れる人を見つけられるまでの間は、グループワークのほうを進めていくことにしたのだ。

 図書館一階の閲覧スペース。

 夏休みの、それも学校は二、三十分前に終わったばかり。僕たちの他に歌高生の姿はなく、一般の利用者と中学生が数人いるだけだった。

 僕たちはグループワークに取りかかる。和歌子に大部分を手伝ってもらうとしても、最低限の下調べは必要そうだ。

 孝慈が言ったように「歌扇野の昔と今の町並みの比較」をテーマにするなら地図が必要だと思い、最近の地図と古い地図とが載った本を司書さんに探してもらって、コピーを取ることにした。

 後ろで調べものをする孝慈達の会話を聞きながら、プリンターに本をセットする。

「和歌子さ、普段は学校ではどうしてるんだ」

「学校の人達を観察するのは面白いですよ。

 色んなドラマがあって飽きません。それに、先月現校舎に運ばれてしまいましたけど、書庫で本が読めましたから。

 退屈はしませんでしたよ。分霊になれば町も歩けますし」

「和歌子ちゃんの本体は、こうやって町にいる間は?」松野が聞いた。

「時計台であんなふうに脱け殻になってます。

 あの場所は厳重に鍵がかかってますし、そもそもわたしは他人には見えないので。

 あ、いちおう鍵は本体が持ってます」

 全体図をコピーしたところで、後ろのほうにいた和歌子が突然大きな声を出した。

「ああっ、結人さん!」

「どうしたのさ」

「たった今、不幸が訪れそうな人が見つかりました」

と和歌子が慌てて言う。見つかった? 僕は作業の手を止めて聞く。

「反応があったの?」

「はい、この近くにいるようです」

「ほんとうか」

和歌子の声に、後ろで本を調べていた孝慈と松野もこちらに来た。

「こっちに近づいてきているようです。はて、図書館に用事でしょうか?」

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