第14話 Side LU - 531 - 14 - こわいよぉ -
Side LU - 531 - 14 - こわいよぉ -
「僕に話ってなんなの?」
団長さんが重々しく口を開きました。
「実は、感じたのだ・・・」
「団長さん、気付いてないだけでそれは恋だよ、胸がきゅんって切なくなって相手の事が気になるのが恋だってタニタさんがお部屋に隠してる男同士の恋愛小説に書いてあった・・・」
ガタン!・・・
あ、タニタさんの顔色が悪いな、どうしたんだろ・・・。
「くふっ・・・・ふひゃはははは!、もうダメ、お腹痛いやめて・・・・あはははは!」
高価なドレスも気にせず床に崩れ落ちて笑うエメラルダお義姉様、そんな感じで笑うんだ・・・いつもは淑女らしく凛とした佇まいでかっこいいのに・・・。
「それか他の団員さんが僕を気に入って、結婚の申し込み・・・」
「頼む!、私の話を最後まで聞いてくれ・・・」
「あ・・・はい」
わぁ・・・団長さん顔が近いよ・・・間近で見ると迫力あるなぁ・・・。
「姉君が限界のようだから手短に話す、ルシーア嬢、王国魔法騎士団に入る気はないか?」
「へ?・・・」
あ、淑女らしくない返事しちゃった、なんだよ「へ?」って・・・お義母様に注意されちゃう・・・いやお義母様は今全力で笑うのを我慢しててそれどころじゃないっぽいけど・・・。
「君がこの王城に入った時、魔法騎士団の連中が騒ぎ始めた、膨大な魔力の持ち主が城に入った・・・とな」
「・・・」
「だから私は魔力を辿って城を捜索したのだ、そして見つけた先には君が居た」
「・・・」
「魔力量の多い人間は希少だ、君には価値がある、大きな商会に高待遇で雇ってもらえるだろうし他国が目を付けて騎士団に勧誘するかもしれない、君はまだ12歳だから働ける年齢ではないが、先にうちが予約を入れておこうと思って声をかけた」
「・・・」
「繰り返し言っておくが私は幼女や男性を恋愛の対象にする趣味はない」
「ぶふぉっ・・・ふひっ・・・ひゃはは・・・」
お義母様油断したね・・・最後の最後で限界を超えちゃったか・・・。
「団長さん、うちのルシアちゃんってそんなに魔力量があるんですか?、小さい頃は普通に成長してたから家族は皆気付かなかったけど」
「ある、・・・私の印象だと白銀の大魔導士様や狂乱の大賢者様が近くにいらっしゃる時と同じ感じがした、もちろん私よりも多いだろう」
「なん・・・だと、だが何故今まで気付けなかったのだ」
お父様が驚いています・・・まずい・・・僕の秘密の特訓がバレちゃう・・・。
「ルシアちゃんは夜会にほとんど参加してないからね、3年くらいずっと欠席してたし、魔力量が多い人の近くに行かなかったからだと思う」
復活したアルベルトお兄様がお父様に答えました。
「だが3年前には参加していただろう、急に増えたとでも言うのか?・・・あ」
お父様が僕の顔を見つめています・・・そんなに見つめられると照れるなぁ・・・。
「ルシアちゃん、何か心当たりはあるかな・・・いや今は言わなくていい!、っていうか言っちゃダメだぞ、後で陛下のところに行こうか」
「え?・・・」
「騎士団長さん、勧誘の件は即答できないと思うので後で家から正式に・・・ルシアちゃんの意思も聞かないといけないし・・・」
「あぁ、それは理解している、私の希望としては15歳になったら是非魔法騎士団に入ってほしい、どのような場所か見学に来てもらってもいいし・・・」
「見学!、行く!、行きたい!」
あ、思わず声に出ちゃった・・・だって憧れの魔法騎士団、僕の心はこの時すでに決まっていました。
「ルシアちゃん昔から白銀の大魔導士様や魔法騎士に憧れてたからね、改めて意思を聞く必要はないかもなぁ・・・」
「良い返事をお待ちしている、当主殿、時間をとらせて申し訳なかった、それからご息女を怖がらせてしまった事についても謝罪させてほしい」
「気にしなくていいですよ、ルシアちゃんの将来にとっても悪くない話だろう」
「では私はこれで失礼する」
ぎしっ・・・
団長さんが立ち上がったら沈んでたソファが元に戻ったよ・・・凄いな・・・。
バタン・・・
あれから大変でした、団長さんがお部屋を出て行って・・・笑い転げるお義母様やお義姉様達、お母さんやタニタさんまで笑ってるし・・・。
「シアちゃん可愛いから本当に求婚されたと思ったぞ」
「でも魔力量そんなにあったのか」
「気付かなかったぞ・・・」
「・・・」
そんな事を話す家族の中で何かに気付いたらしいお父様は深刻な表情で執事さんに耳打ちしています。
こうして久しぶりに参加した夜会は幕を閉じたのです・・・そして・・・。
フルフル・・・
「あ・・・あぅ・・・」
夜会の翌日、お家に携帯用の魔法陣が届きました、これを起動させて「僕一人で」転移するように・・・と。
言われた通りにやった結果・・・今僕はギャラン・ローゼリアの王城の中に居て、謁見の間で統一国王陛下と対面しています、うぅ・・・怖いよぉ・・・。
「顔を上げなさい」
「ひっ・・・」
統一国王陛下の前で跪き、臣下の礼をしていた僕に陛下が声を掛けます。
謁見の間には他に5人、普通なら護衛の騎士様が大勢いる筈なのに今は居ません・・・。
まず目を引いたのは白銀の大魔導士リーゼロッテ・シェルダン様・・・ローブを着ているから体格は分からないけど僕とあまり変わらない身長、そして左目を覆う眼帯・・・間違いなく歴史の本に記されている伝説の大魔導士様。
そしてそのお隣には身体の大きな男の人2人と小柄な女性、そして長髪の若い男性・・・。
おそらく大魔導士様のご両親、アーノルド・シェルダン様と、マリアンヌ・シェルダン様、そして弟のコナンザ・シェルダン様、残るお一人・・・筋肉質でいかつい・・・ナイフを出して舌で舐めてる謎の人・・・おそらくリーゼロッテ様の叔父上、シルベスター・シェルダン様。
この人達がシェルダン家の頂点・・・僕とは血縁関係にあるけど、お会いするのは今日が初めてです。
統一国王陛下は・・・僕が住むエテルナ大陸にあるローゼリア王国とお隣のギャラン大陸にある兄弟国、ギャラン・ローゼリア王国、2つの超大国を統治する最高権力者。
「怖がらないでいいよ、楽にしなさい、それから悪いけど本当かどうか判断する為に瞳水晶を使わせてもらう、水晶の上に手を置いてもらえるかな」
この大陸には古代文明の遺物を復活させた魔道具があります、瞳水晶・・・その水晶に手を当てて、質問に答えると・・・本当なら青、嘘なら赤に光るのです、これで僕は嘘がつけなくなりました。
「・・・はい」
「さて、エテルナ・ローゼリアの国王から報告があって君に来てもらった、少し聞きたい事があってね」
「・・・」
「君は10歳くらいまでは普通に成長していたと聞いている、だが今は膨大な魔力を持っているね、心当たりはあるかな?」
「あ・・・あぅ」
「怒らないから正直に話しなさい」
怖い・・・でも話さないと。
「僕・・・いえ、私は昔から白銀の大魔導士様に憧れていて・・・どうしたら大魔導士様みたいになれるかなって・・・そう思って・・・図書館で文献を読み漁って、大魔導士様の事は全て・・・どんな小さな記述でも調べました・・・そしたら一つの可能性に辿り着いて・・・その推測が本当に正しいのかどうしても検証したくなって・・・自分の身体で実験していたら・・・魔力量が増えました」
水晶が青く光ります。
「ほぅ・・・」
「大したものだな・・・自力で「答え」に辿り着いたのか、ははは、リゼたんと同類だな」
アーノルド様が愉快そうに笑っています、僕は緊張と恐怖でお漏らししそうなのに・・・そういえばアーノルド様は僕のお父様に少し似てる・・・っていうか僕のお父様「が」似てるんだけどね。
「では次の質問だよ、この事を誰かに喋ったかな」
「いえ、僕・・・私の趣味で始めた研究だから誰にも話していません」
水晶が青く光ります。
「家族にもかね」
「言うと危ないって止められそうだったから・・・話していません」
水晶が青く光ります。
「そうか・・・、さて、こんな所で話をするのは落ち着かないだろう、別のお部屋に行こうか」
僕は今から何をされるの?、怖いよぉ、お父様助けて・・・それから・・・お手洗いに行きたいな。
「ルシーアくん」
「ひ・・・ひゃい!」
「緊張しなくてもいいよ、楽にして」
この状況で楽にしろって言われても無理だよぉ!。
「本題に入ろうか、君が自分の力で導き出した「答え」は・・・国家機密でね、他言されると非常にまずい」
「・・・」
「この大陸・・・いやこの世界の人間は魔力量というのは生まれ持ったもので、後で増やせるとは思っていない・・・」
「・・・」
「後で魔力量が増やせる、そして増やす方法が知られると危険なのだ、あちこちで膨大な魔力量を持った化け物が誕生するからね、そしてその人間が善良であるとは限らない・・・聡明な君なら私が言っている意味は分かるよね」
「はい、悪人にこの事が知られると危険だと思います」
「そうだね、この秘密を知っている人間は限られている、白銀の大魔導士殿が最初に方法を発見して・・・それを説明した時に同席していた家族、そして報告を受けた私とその家族・・・私の家族で知っている者は娘以外亡くなってしまったがね・・・」
「あとはリゼちゃんの師匠と弟子・・・狂乱の大賢者殿と黒衣の大魔導士殿、その他に2人程居るかな、全員信用できる人間で、絶対に他言しないと約束してもらっている、君はどうだろう・・・まだ我々は君の事をよく知らない、善良な人間か、それとも悪い人間か・・・」
「僕・・・いえ、私は誰にも喋りません」
「我々は君の言葉を・・・果たして信用していいのだろうか・・・(ニコリ)」
「ひっ・・・」
「我々は君が裏切って、「これ」を悪用したり、他言しないように縛る事も考えている・・・例えば・・・精霊契約を受けてもらい、契約に違反した場合は両腕が吹き飛ぶ・・・なんてのはどうだい?」
フルフル・・・
「或いは、奴隷のように首輪を嵌めて、君がその膨大な魔力を武器に我々と敵対した場合、殺せるようにしたり・・・」
「い・・・いやぁ・・・」
「ほら、リゼちゃんの両腕には腕輪が嵌っているだろ、あれは彼女が暴走した時、師匠である狂乱の大賢者殿が魔力を流すと痛みで泣き叫びながら死ぬようになっている、君も付けるかい?」
「ぐすっ・・・やだぁ・・・そんなのいやだぁ・・・ひっく・・・許して・・・」
しょわしょわぁ・・・
ほかほかぁ・・・
「あぅ・・・お漏らし・・・ひっく・・・こわいよぉ・・・ぐすっ・・・お父様助けて・・・わぁぁん!」
「おい!、やり過ぎだ!」
「す・・・すまん、これほど怖がるとは思ってなかった・・・」
「ひっく・・・ぐすっ・・・」
僕はあれからお部屋に入って来たメイドさんに連れて行かれ・・・お風呂で洗われて再びあのお部屋に戻って来ました・・・うぅ・・・陛下やシェルダンの人たちの前でお漏らし・・・恥ずかしいよぉ・・・。
ちなみにお部屋の床は完璧にお掃除されてたし・・・。
「すまなかった!」
陛下に頭を下げられてしまいましたぁ・・・。
「いえ・・・ぐすっ・・・大丈夫ですから・・・頭を・・・上げてくだしゃい・・・」
今僕はマリアンヌ様に抱き抱えられ・・・頭を撫でられながら陛下には頭を下げられるという、訳が分からない状況になっています・・・何これ・・・もうやだ帰りたい・・・。
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