第5話 Side LU - 531 - 5 - るしるくん -

Side LU - 531 - 5 - るしるくん -



「じゃぁ行って来まーす」


エテルナ・ローゼリア王国旧王都にあるシェルダン家のお屋敷、家が大きくなるたびに増改築を繰り返して来たけど3階建ての築600年以上を誇る大豪邸、王城と並んで国の重要文化財に指定されている旧王都の観光名所。


今日もお屋敷の周りには沢山の観光客、・・・遠くて僕のお部屋からは見えないけどね、今から僕が向かうのはここから魔導列車で半日ほど走った所にある巨大都市、新王都、ネオ・ローゼリア。


上級貴族の家にのみ設置が許された魔法転移システムを使ってネオ・ローゼリア中央駅、転移中継室に一瞬で転移、そこから1区画ほど離れた王立、新王都大図書館が今日の目的地なの。


「お嬢様!、ボクは初めましてですね、今日護衛を担当するアーシア・ブルナカノンって言います!、どうぞよろしくです!」


「わぁ・・・ボクっ子だ、・・・人のことは言えないけど・・・、よ・・・よろしくお願いします」


僕が外出する時には必ずシェルダン家の騎士を1名護衛として同行させる事、これが僕が自由に外出できる条件、お父様との約束です、そして今日お家の転移室に現れたのは小柄な女性騎士様、ブルナカノンといえば我が家に代々仕えてくれている武の名門、でも・・・強そうには見えないな・・・。


「アーシア、命に換えてでもお嬢様をお守りするように」


地を這うような低く威圧感のある声で話すのはカイオーウ・ブルナカノン様、いかついお顔に大きな身体・・・上級貴族、ブルナカノン家の現当主でシェルダン家騎士団長・・・。


「まかせるっすよお父様!、きっちりお勤め果たすっす!」


「お嬢様、こいつはまだ新人だが俺が鍛え上げた娘で腕は確かです、だが食い物に目がなくて屋台を見つけるとふらりと居なくなっちまう、しかし今この時よりお嬢様の護衛です、昨日も散々言い聞かせました、もしそのような事が万が一にでもあったら私に言ってください、帰ってから足腰立たなくなるまで痛め・・・いや、弛んだ根性を叩き直しますので」


「・・・はい、ありがとうございます、ではいきましょうか」


「了解っす、ボクの事は気軽にシアって読んでくださいっす!、あと敬語は必要ないっす!」


「うん、よろしく、シアさん、・・・僕もお母様にはシアって呼ばれてるんだよ」


「じゃぁ同じ僕っ子のシアちゃん同士、仲良くしましょうっす!」


転移魔法陣のあるお部屋に入り、行き先を設定、新王都ネオ・ローゼリア中央駅内転移中継室・・・っと。


膨大な魔力を必要とする転移魔法陣に改良を重ね、2つの魔法陣の間を行き来する技術、この魔法転移システムを開発し、転移網を構築したのが白銀の大魔導士様、それからその師匠の狂乱の大賢者様。


国の英雄にして最高戦力のお二人、普通なら良い暮らしをしてのんびりと毎日を過ごしても許される立場なのにまだ国の発展に多大な貢献をされているの、・・・あぁ、憧れるなぁ、尊敬しちゃうなぁ・・・。


それにこの魔法転移システムの大元は新王都の転移管理室にあって、そこに白銀の大魔導士様が定期的に訪れて魔力を供給しているの、だから白銀の大魔導士様が居ないとこの転移網はうまく機能しない・・・。


最近ではそれじゃダメだっていう事で民間の魔力量が多い人達を雇ったり、お金を払って魔力を提供してもらったり、さまざまな工夫をしていずれは下級貴族、そして平民の人達にもこの魔法転移システムを使ってもらおうと日々改良を重ねているの、その中心にいるのも白銀の大魔導士様!。


僕とシアさんの2人は魔法陣の上に立ち、そして魔法陣を起動、一瞬で視界が切り替わってここはもう新王都のネオ・ローゼリア中央駅、その中にある転移中継室、この駅は大陸魔導鉄道の中心地で毎日沢山の人々が行き来する場所・・・。


「ボクこの駅の転移中継室来たの初めてっす、広くて魔法陣が沢山並んでるけど人居ないっすね」


「せっかく作った魔法転移網だけど、上級貴族ってあまり駅を利用しないからね、この転移中継室もいつも人が居ないんだ、たまーに避暑地に列車でのんびり向かう家族連れと護衛が出てくるくらいかな、でも下級貴族の人達にも普及したらこの駅ももっと混雑するかもね、今の新王城って混雑して転移待ちが出てるでしょ、・・・ここがあんな風になったら僕困るんだけどね、よく利用するから」


「へー、そうなんっすか、よく分かんないっすけど」


今の僕の格好はイッモジャッジィの上下にTシャツ、イッモジャッジィのズボンの下は下着がわりのヨッガレギーンス、それから借りてた本や資料を入れた背負うタイプのリュック、髪は後ろで束ねてるから男の子に見えるかも、右手首には身分を認証する魔法陣が刻まれた腕輪、これを持ってないと転移できない仕組みになってるの。


シアさんは剣を持って騎士団の軽装の制服、着崩してるのでぱっと見ハンターにも見えなくもない?格好、うん、あまり目立たない2人組だね、大柄な騎士様が護衛だと悪目立ちするんだよねー。


「ねぇシアさん、これから魔導列車に1駅乗って大図書館に向かうんだけど、お嬢様呼びは止めて欲しいの、ここでは僕、男の子ってことにしてるんだぁ、だから僕の名前はルシルだよ、それからお家のみんなにはこの事内緒にして欲しいの、良いかな?」


「了解っす、何か訳があるんっすよね、大丈夫っす」


「ありがとう、お礼と口止め料として帰りに肉串を買ってあげよう、駅の外に美味しい肉串屋さんがあるんだよ」


「やったぁ、ルシルくん大好きっす!」


「わぁ、こらこら抱きつかないでー」


さぁ、お休みの日に僕が1日のほとんどを過ごしている新王都大図書館に行こうか!。

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