「シン・異能DA人工島」B.Side Edition

Altanate

E1.「彼方からのECHO」Remember

 「鏡の中の残響に立ち向かったの、そうする他無かったから。」


 今までの私の人生は、全てが満ち足りていると思っていた。両親が居て、ご飯が食べれて、満足に寝れて。ただ、目に病気がある様で、視界がモノクロになってしまってはいたが、少なくとも幸せに感じれていた。十七の時までは。


 私の生活には、違和感があった。私と同年代くらいっぽい子は学校? と言う所に行っているらしいし、両親と同じくらいの人は私達とは関わろうとしなかった。

数年前の自分は、これと言って気にしてはいなかったが、考えてみると、色々とおかしい点があった。この世界には、スマートフォンやパソコンといった物があるらしいが、私はそれを使った事も見た事も無い。それどころか、テレビと言うのも見せては貰えなかった。

幼少期、勇気を出して親以外の大人に話しかけてみたが、何かをボソボソと言ってそのまま何処かに行ってしまった。その頃はちょっと寂しいくらいにしか感じなかったが、今なら、何を言っていたのかわかる。


「呪い子が、気持ち悪い笑みを浮かべて外を歩いてるんじゃねぇよ。」と。



 ある日、夜も更けて来た頃、ふと目が覚めると、外には近隣の人達が集まっていた。

何かと思って見ていたら、その人達は家に向かって瓶を投げて来た。しかもこの音からして、全方位から投げられている。私は、何かおかしい、このままだと死ぬと思い、急いで外に飛び降りた。


地面と体がぶつかるのは、痛い。脆弱な体を石やコンクリートが抉り、足からは赤く輝く血が溢れてくる。そして家の方に目をやると、我が家は、先程まで睡眠を摂っていた自宅が、燃え上がっていた。その現場を近隣の人達が囲み、何か罵声の様なのを浴びせている。理解が追いつかない。何がどうなっているのだろうか。ただ、周りの人たちは、私が生きていると言う事に気づくと、血眼になって辺りを探し出した。何か使命感を持っている様な、そうしないと自分が殺されてしまうと言わんばかりに。逃げようと地を這うが、遅かった。首を掴まれ、狩りを行っているかの様に引っ張られる。


「お前もあいつらの様に炙ってやるよ。」


 と言っていた様な気がする。その時、誰かが声をかけて来た。その頃にはもう意識も朦朧としていたが、そこにはスーツ姿の人が何人かいた様な気がした。


 目が覚めると、そこは病室の中だった。何が起きたのか、ここは何処なのか、辺りを見回してみると、近くにはあの時にいた、スーツ姿の人がいた。

私は聞いた、親は、家は、みんなはどうなったかを。その人は口篭ったが、話してくれた。全てを。私の親は、焼け死んだ事。あの集落では、何処かの一族を「忌み子」と称して集団差別が行われていた事。あの場で使われた凶器も、近隣の人達が捕まった事も全て。

私は、これから収容所に連れて行かれるらしい。だから何だと言うのだ、私には何も残っていない。もう生きていても何の希望も、未来も無い。



 気づいた頃には、私は廃ビルの上に登っていた。そうだ、飛び降りれば、死ねば、また両親と会える。これが私の人生なのだと。そう考えていた。でも、それは彼に止められた。最初は気に食わなくて、辺りの棒で殴りかかってもみたが、呆気なく弾かれてしまった。そして彼は言った。


「死のうとしてるなら、私の事など気にせず、飛び降りればいい。だがお前はそうしなかった。お前はまだ生きようとしている。」


 私は、気づいた。生きる意味なんて無いと思っていたが、それは違うのだと。


 私は、失われたはずの人生において、初恋をしたのだ。

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