アウドレイ And Now the Beginning

16Vitor-1-07010

第1話 And Now the Beginning

 誰もが知っていることを超え、現実が許すべきことをも超えて、世界の謎は問題が起こる様子を見ている。誰もが何も待っていない時に現れる。まるで全ての終わりのように。


 輝きのない月の表面を歩く「それ」は、静かに進み続けている。「それ」の足跡は、普通の人間の足の二倍ほどの大きさの穴を残す。しかし、その穴は数秒も経たないうちに消え、「それ」がそこにいなかったかのように、月は本来の姿を戻す。それでも、「それ」は歩みを止めない。何もかもが起きたかのように。


 全ての生と死に囲まれ、様々な色と大きさのケーブルが、無限の星の外側へと飛び出している。それらは揺れたり垂れ下がったりしながら、この終わりのない空間を漂っている。あなたが見ている全てを爆発させるのではないかと恐れるほど、星は火花を散らしている。その輝きは、まるで電子な物のように。


「それ」は話す言葉ごとに声が変わる。一つの声を持つことはなく、その声は常に変化している。「それ」が歩みを止めると、肌全体が落書きアニメーションに覆われた顔を横に向け、隣の惑星を見つめる。まるで、自分の存在が検閲されたかのように。


 その惑星は奇妙な形をしている。ほぼ平らでありながら、わずかに端が内側に曲がっている。まるで全ての水が今にも降り下がるケーブルの火花に触れそうに見える。そこには四つの王国――ドワーフ、竜、エルフ、ヴァンパイア――だけが存在し、円形に隣り合って繋がっている。しかし、真ん中には水だけでできた空洞があり、何かが欠けているように見える。「それ」はその惑星に手を伸ばす。そこは、アウドレイが住む惑星である。


「自らの誕生の特性をヴァンパイアに変わっても失はない様々な種族の動物へ、世界を作るドワーフへ、人々を守る竜へ、知識を受け継いたエルフへ、世界の問題を解決するヴァンパイアへ、全てを結んで魔法へ。これが始まりではない、これが物語の終わりだ」

「それ」は歩き続ける。

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