夢見ヶ丘戦記外伝局地戦線

タカシ・セイヒ

第1話悩める夢魔と性転換の蜘蛛姫

現在夢見ヶ丘学園通称夢学は学校大戦の真っ只中にある、それは良くある事だ、しかし今回の戦争は今までの戦争とは勝手が違っていた

生徒による生徒のための戦争、その言葉によって今まで主戦力だった幹部や実力者達がこぞって反乱に参加したのだ

ここは夢見ヶ丘学園の事務室である、そこに一人の生徒が椅子に腰掛けて頭を悩ませていた

背中からは蝙蝠コウモリに似た翼を生やし、青紫の肌には露出度の高い衣服を羽織りまるで夢魔サキュバスのような外見をしている

その夢魔サキュバスが頭を抱えながらため息を漏らす、参謀を務める彼女は夢見ヶ丘の効率重視の戦い方に危機感は持っていた、しかしこの局面でその行いが廻り回って今やって来た気がする

「今まで効率重視で部下の育成をして来なかったツケが回って来たのかなぁ?」

弱い生徒達を最初に連戦させ、いきなり強力な幹部級生徒をぶつけて弱い相手に馴れた敵を強者で不意に蹂躙する、それこそが夢見ヶ丘学園の必勝法かちかたでありそのために幹部のみを集中して育成して来た、しかし今回その幹部がこぞって敵に回ってしまった

そんな悲嘆に暮れる彼女の下に一人の生徒が姿を現す

その姿は他の生徒に比べてほっそりとした全体的にシャープな形をしており背中からは巨大な左右合わせて八本の鍵爪カギヅメのようなものが生えている

深い紫色の美しい肌に蜘蛛を模した外骨格装甲が浮かび上がっている

彼女の名前はリンダ、性転換トランスセクシャル蜘蛛姫アラクネと呼ばれる幹部級の生徒である

「そんなに思い詰める必要はないわよ、裏切る可能性があった者が一人残らず居なくなっただけ、今存在する生徒達に裏切る者はいない」

それぞれの趣味嗜好を尊重し尊ぶ生徒達の中にもどうしても認め得ない趣味ぞくせいが存在する

一つは夢学の校訓として掲げるツインテールに同居出来ないモノ、他の髪型や弟趣味ショタコン薔薇趣味ボーイズラブ等ツインテールに出来ない、ないしは似合わない男性系統の趣味ぞくせい

もう一つは男のガールズボーイ女装ガールズファッション等のそれは如何なモノか、と評される如何物趣味イカモノぞくせいと呼ばれる趣味ぞくせいである

彼女の持つ性転換トランスセクシャルもまた多くの非難に晒された難しい趣味ぞくせいとして知られている

しかし彼女はそんな逆風も異に返さずに弱小じゃくしょう教室ぶたい一生徒いっぺいそつから己の実力だけで幹部に上り詰めた実力者である、そんな誰よりも苦境を知る彼女だからこそこの状況にすら余裕を持って臨む心構えが出来ているのだろう

「しかし浦安の密林地帯で多くの生徒からの連絡が途絶えています」

「大部隊が投入されて返り討ちにあったという話ね、浦安みつりんのゲリラコマンダーが陣取っていて苦戦しているらしいわね」

「あのゲリラコマンダーが!」

目の前の生徒と同じように蜘蛛の特性を身に宿す強力な生徒である

「まさか彼女もこの反乱に参加していたとは・・・」

「大丈夫よ、なんせ彼女の元にはあの戦乙女が向かったのだから」

無毛の戦乙女ヴァルキュリア、そう呼ばれ畏れられる彼の生徒が向かったのか、戦争も序盤で彼女程の生徒を向かわせる事態に彼女は戦慄した


木々が生い茂る浦安みつりんで夢学生徒達が各部隊に別れて索敵していた、腕に小銃を仕込んだ小手を装備する者や抜き身の刀を持つ者等がおり皆一様に油断無く辺りを見渡していた

そんな中頭上から突如として雷が落ちて来た、それはクモの巣の形をしており、警戒していた生徒達を難なく絡め取ってしまった

悲鳴を上げるヒマも無く次々と同じように絡め取られて行く生徒達

浦安みつりんの中で魔物のように蠢く強敵を誰も捉えられずにいた


つるりと輝く無毛の頭、背中には青白い光を纏った純白の翼、面にはこれから予測される強者との戦いに喜悦の笑みを浮かべている

まさしくその姿は無毛の戦乙女ヴァルキュリアである、この浦安みつりんにその信念スキンヘッドを魅せつけるように降り立つのを浦安みつりんの奥で鋭く光る眼光が捉えていた

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