第33話 タイムアタック

「それで、何をするんだ?」

 部屋のあるじは、一応聞いちおうきいた。とはいえ、ハジメの部屋で勝負しょうぶといえば、やはりビデオゲームしかない。

「そんなの決まって――って、これ、新しいやつじゃないですか?」

 死神しにがみちゃんがTV下の収納スペースから取り出したのは、新作ゲームソフト。

「目ざといわね。青井あおいユイ」

「さすがだぁ」

 マツとナオキは、別々に見えて近い感想をべた。

 ハジメが、ゲームソフトの内容について説明する。昔のゲームの一部を切り出して、お題に挑戦するものであること。いろいろなゲームが入っており、それぞれ操作感覚が違うことなどを語った。

「――というわけで、これはゲームでタイムアタックをするやつなんだ」

早速さっそく勝負しょうぶしましょう!」

「ふっ。望むところよ」

 ふたりが同意したことで、勝負しょうぶが始まった。

 まずは、パワーアップアイテムを取るまでのタイムの早さを競う。

 の前に、ふたりともこのソフトをプレイしたことがない。死神しにがみちゃんの頼みで、練習から始めることになった。一度プレイしたら、コントローラーを相手に渡さずとも別のコントローラーを使って二人でプレイできる。のだが、今回は一人ずつ順番でするらしい。

「むずかしいですね」

「練習では、アタシの勝ちね」

「二人とも、なかなかやるじゃないか。初めてにしては」

 ハジメがめた。めずらしい。死神しにがみちゃんは照れている。

「それじゃあ、本番、いってみようか」

 なぜかナオキが仕切っている。人の家でこいつは。いかん、いかん。余計なことは考えるな、と思った部屋のあるじは、黙っていた。

 先攻は死神しにがみちゃん。流れるような動きで、すばやくアイテムを取った。評価は、Aになった。

「へぇー」

「すごいですね」

 後攻はマツ。無駄むだのない動きで、するりとアイテムを入手。評価は、なんとAAだ。Aの上である。

「ざっと、こんなものよ」

「くっ」

 結果はマツの勝ち。死神しにがみちゃんは悔しがっている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る