第3章 新1年生の親睦バスケットボール大会
第22話 クラス会議
入学から十日ほどたち、新しい生活や難しい授業にも少しずつ慣れ始めてきた頃。
クラス委員の僕はホームルームの時間に、教壇に立ってクラス会議の司会進行を務めていた。
すぐ後ろにはクラス委員補佐のひまりちゃんが、板書係として笑顔で待機している。
「それでは今からクラス会議を始めます。議題は月末に行われる新1年生の親睦バスケットボール大会について、その中でも主にチーム編成についてです」
僕の言葉を受けて、クラスメイトたちが悲喜こもごもな声を上げた。
「おっしゃ、バスケなら任せとけ!」
「一年生レギュラーの実力を見せてやるぜ」
「レギュラーじゃなくて、レギュラー候補だろ」
「盛るなってーの」
うちのクラスに4人いるバスケ部員たちは、自分たちの活躍を想像しての喜びの声を。
「えぇぇぇ……」
「バスケとか運動量多すぎてマジ無理なんですけど」
文化部や帰宅部などの運動が苦手な大多数の生徒たちは悲しみの声だ。
しかし僕は喜ぶバスケ部員たちに、昨日の学年委員会(各クラスのクラス委員&クラス委員補佐が参加する月イチの会議だ)で聞いた悲しい事実を伝えなくてはならなかった。
「残念なことに、現役バスケ部員は審判と運営をやってもらうので、競技には参加できません」
その一言で、盛り上がっていたバスケ部員たちが一転、(o´・ω・`o)ショボーンとした。
白チョークを持ったひまりちゃんが黒板に「バスケ部員は審判・運営として参加」と、ちょっと丸文字の入った可愛いらしい字で板書した。
「あと、中学でバスケ部だった人も参加できません。同じように運営と審判をやってもらいます。これは経験者がいると実力差がありすぎて、勝負にならないからだそうです」
僕の追加説明に、元バスケ部員とおぼしきクラスメイト数人も(o´・ω・`o)ショボーンとする。
どうもこのクラスは素直な生徒が多いらしい。
ひまりちゃんが「元バスケ部員も右に同じ」と書き記す。
「それでここからが本題なんだけど、各クラス男女別で、1チームずつを作る必要があって、1チーム10人で編成をします。そして僕たち1年1組の男子18人のうちバスケ部の4人は出られないので、残りは14人。そして野球部の長嶋くんが突き指で怪我をしているので、1人減って13人。さらにここから中学でバスケ部だった生徒を除外する必要があるので、中学でバスケ部だった人は手を上げて下さい」
僕の言葉に3人の男子生徒がガックリした顔で手を上げた。
「この3人も運営に回るから……。つまり残った10人全員で、男子は1チームを作らないといけないってことか……」
僕の言葉に、強制参加が決定した男子たちが悲鳴のような声を上げた。
というのもこのクラス、男子は運動部員がバスケ部4人と野球部1人しかいないという、帰宅部と文化部の集まりなのだ。
僕も当然、その中の一人だ。
ひまりちゃんが「それ以外の男子は全員参加(ケガ人を除く)」と黒板に書き記した。
この時点でもう戦力の低さは露呈しているけれど、毎年恒例の学校行事なので文句を言っても始まらない。
「一応、順位は決めるけど、成績には加味されないし、あくまで仲良くなるためのお遊びイベントらしいから、気楽にやればいいと思うよ」
僕は改めてこの球技大会の趣旨を伝えたものの、運動が苦手な男子たちは皆一様にがっくりと肩を落としたままだった。
その後、女子チームも同じように決めていく。
女子は半分が運動部員とかなり強めのメンバー編成で、ひまりちゃんと雪希もメンバーに入っていた。
見た感じ、僕ら男子と違って女子はいい線行けそうな感じかな?
ひまりちゃんは運動部並みに運動が得意だし。
最後に「5クラスの総当たり戦」「1試合は7分ハーフ」「練習は体育の時間を使う」といった基本ルールを説明して、特に問題位もなくクラス会議はつつがなく終了した。
「バスケットボール大会なんて、小学校以来だね。がんばろうね、アキトくん♪ カッコいいところ、見せてね」
終わりしなにひまりちゃんが素敵な笑顔で言ってくる。
「やるからには全力で頑張るけど、カッコいいところを見せられるかは微妙かなぁ」
僕への期待値が高すぎるひまりちゃんに、僕は苦笑を返したのだった。
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