第2話 水龍少女と火炎魔人の出会い
魔王様の命により水没廃都ハイドロタウンに出向いたバルファクは無事に到着し、上位魔族の探索を開始する。
今回の任務は魔王様を超えうる魔力の"原因"を調べることと上位魔族3名の安否確認の2つだ。
上位魔族が帰ってこないならば3名は原因と交戦中の可能性が高いため、この条件なら両方同時に達成できるだろう。
となると早く上位魔族3名を見つけるのが早いのである。
そう考えたバルファクは膝下全体から炎を発生させその勢いで空を飛ぶ。
上空から地上を見下ろし魔族を探すがそれらしき反応はない。
「どういうことだ…?反応がない...」
一抹の不安を覚えつつ、足から出てる炎を弱め雨で濡れている古びた細長い建物の上に着地する。
「さて…どうしたものか。」
バルファクは情報がなさすぎる状況に困惑しつつも、どうすればいいか考える。
だがいくら考えても答えは一つしかなかった。
「やっぱり探し回るしかな…!?」
バルファクが古びた細長い建物から降り、上位魔神達の捜索を開始しようとした瞬間だった。
突如として魔王様を超えうる…いや明らかに超えている魔力を探知する。
「これは…想像以上だな…」
想像よりも遥かに多い魔力量であったため少し動揺するが、それよりも早く対処にいかなければならない。
バルファクは再び空を飛び魔王様超えの魔力を探知した場所に向かう。
そうして魔力を探知したハイドロタウンのはずれにある元々は人間がスポーツをするための館に入る。
この館はもう古びてこそいるが地面が高い場所に設立されてあったため浸水してはいなかった。
当然人間はここに避難してくるだろうが豪雨のあと魔王軍がすぐ攻め込んできたので人間たちは国を見捨て逃げたのである。
そんな歴史の振り返りもそこそこにバルファクは、きしんで錆びている扉を押し開け屋根に穴が空いて雨が入ってきている館内へと足を踏み入れた。
少し歩いたところにあった広い空間でバルファクは一人の少女を見つける。
「あなたですか。魔王様を超える魔力の出どころは...その”角”と”尻尾”、確かに”竜種”ならその魔力量は納得です。」
少女はその声に反応してさっきまで砂を集めていたであろう小さいスコップをポケットにしまい、
期待を向けた目でこちらを見てくる。
「今度はあなたが”遊び相手”なのね!このデミルと遊ぶの!」
突然のことにバルファクは少し固まってしまう。
今の言葉の中にに何か引っかかるものを感じたバルファクは竜種を前に普通に考え始めてしまった。
「何をぐずぐず悩んでいるの!食らえ!
一般的には火は水に弱いとされる。大体のケースは火が負けて水により消火されてしまう。
しかも竜種であるデミルは魔力量が極端に多い
水の威力、量もそこら辺のやつとは天と地では表せないほどの差が存在する。
それ故に水に弱い炎の魔神なんてすぐ消滅するだろうとデミルはそう確信していた。
勝利を確信するデミルの”遊び”とは格が異次元に違う理不尽な水の攻撃がバルファクを襲う。
バルファクはその間も顎に手を当て考えていため、その攻撃は不意打ちとなる
「ふっふっふ。やっぱりこのデミルの遊び相手には程遠いよう...ね....」
デミルは確かにバルファクに不意打ちになる攻撃したはずだった...
だがそこにいたのは弱点の水魔法を食らったはずのバルファクがいたからだ。
「いきなりなんですか...まぁでも違和感の正体はわかりましたよ。」そう言いつつも平然と立っている。
その姿を見て勝利を確信していたデミルは思わぬ事態に困惑の声に出てしまう。
「あなた...私の
質問されたバルファクはさも当たり前のように困惑したデミルに向かって答えを返す。
「周りの水を全部蒸発させればいい話でしょう。」
その答えを聞いたデミルはよくわかっていなかった。
だって今までにそんなことなんて一回もなかったから。ありえないと思っていたから。
でもデミルはあることに今更あることに気づく。
(この魔神...豪雨の中でも平然と歩いているの...)
そのことと今の状況を見て普通ならありえない話をデミルは信じるしかなかった。
絶望...状況はそう言える。デミルの得意な水魔法が効かないのだから。
デミルの顔は絶望に染まる...かと思われたがデミルは口角をあげにやりと笑って見せた。
「あなたすごいの!私の魔法を食らって無傷なんて今までいなかったの!」
デミルは自分と渡り合える存在に出会えたことを歓喜している。
一方のバルファクはというと...
(はぁ...めんどくさいですね...)
すごくめんどくさがっていた。
(にしても世話がだるいからって上位魔族3人を派遣したとか嘘ついて私になすり付けましたね...あの人...あとで仕事増やしておきましょうか...)
バルファクがデミルのセリフに違和感を感じたのは”今度”という言葉である。
まるで前に誰か相手してくれたと言わんばかりの言葉。
絶対前に魔王様が相手したとバルファクは確信した。
そんな思考もそこそこに、デミルがバルファクに話しかけてくる。
「あなたの名前を教えてほしいの!こんな人そうそういないの!」
バルファクは教えたくはなかったのだが、
デミルの目が純粋無垢の期待してる眼差しに負け教える。
「俺はバルファク。魔王軍最強の幹部にして”
バルファクはすっごいけだるそうに答えた。
「あなたはバルファクって言うのね!名前もわかったから遊ぶの!」
デミルは再び魔法を唱え始める。
(これは飽きるまで付き合ってやるしかないか...)
バルファクも諦めたような顔をしつつ対抗するための体制をとる。
「食らえなの!
「食らいませんよ。
無数の水刃と火の鳥がぶつかり合う。
その衝撃は古びた館なんて秒で崩壊し、降り続いていた豪雨も雲ごと吹き飛ばしていた。
そんな遊びという名の戦闘は夕方になるまで続く...
そうして夕方になり激しい技のぶつかり合いが止み戦闘が終了した。
デミルは満足したようで生き生きとしていたが、バルファクの方は50連勤後みたな顔をしてる。
「今までこんなに遊んだ人いなかったの!ありがとなのバルファク♪」
デミルはバルファクの目の前まで駆け寄り、感謝の言葉をバルファクに告げた。
そんなバルファクはデミルが笑顔になったのを見て、今まで感じたことがないほど幸せに感じる。
(あぁ...おれ子供には弱いのかもしれんな...)
バルファクは顔がにやけた。その隙にデミルは...
「それはいいが...なんで俺の腕に引っ付く!?もう俺帰るから離れろ!」
「嫌なの。」
デミルはバルファクの腕につかまり離れようとしない。
バルファクがデミルに離れない理由を聞くと...
「だって住んでたとこなくなったし、それに離れるともう会えなくなっちゃいそうだから。」
と泣きそうになりながらデミルは答える。
どうやら想像以上にバルファクはデミルになつかれてしまったらしい。
バルファクは渋々こんな案を出す。
「なら、俺のとこ来るか?家ないなら一緒に暮そう。」
デミルはその言葉を聞いてまたあの純粋無垢な目でバルファクを見つめて元気よく答える。
「うん!行くの!バルファクの家!」
デミルはほんと嬉しそうだ。そしてその言葉を聞いたバルファクは、
「じゃあしっかりつかまっとけよ!」
そう言って膝下全体から炎を出す。
デミルがしっかりつかまっていることを確認したバルファクは
魔王城までデミルを連れ帰るのであった...
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