第11話 精霊馬車

「・・・馬になったな」

「これは馬だけど・・・なんかへんね」


 突然、怪しい木馬が馬に変化した現象に戸惑う俺とウェンディ。

 眼の前の馬は、俺が良く知っている姿をしている。

 少し黒みがかった茶色の毛並み。

 クリクリの黒目が辺りを見つめている。

 大きさは木馬と同じで、サラブレッドより一回り小さい。


 そんな馬をウェンディが不審がって調べている。

「これは・・・普通の馬じゃないわね」

「いやどう見ても馬だが?ウェンディ大丈夫か?」

「だから違くて!」

 ウェンディが知る馬は違うのだろうか?


「この馬は妖精なの!」

「は?どう見ても馬だろ?それともこの世界は馬の妖精がいるのか?」

「私もこんなの初めてみたわよ。しかも中身が空っぽというか、自らの意志はないみたい。おもしろーい♪」

 そうなんだと言う他ない。俺は妖精に詳しくない。


「おもしろ妖精ってことか。ウェンディみたいに」

「なんですって!私はれっきとした風の妖精なの!そろそろ理解しなさい!」

「ごめんごめん。この馬はおもしろ妖精で、ウェンディはおもしろ妖精ではない」

「変な言い方やめなさい」


 ウェンディとじゃれ合うことしばし・・・


「さて、とりあえずこの馬車と馬を調べないとな。」

「確か取り扱い説明があると手紙に書いてあったわね」

「さっそく調べてみるか」


 ブンッ

〈〈精霊馬車のご登録誠に有難うございます。これでこの精霊馬車はあなた様がオーナーとなりました。各種機能の説明はメニュー画面からご確認下さい。それでは良き異世界ライフをお楽しみ下さい    次へ〉〉


「お?説明してくれるみたいだぞ。次へっと」

「この馬が何なのか気になるわ」


〈〈約款 第一条 目的・・・・・・〉〉


「・・・・・・これは全部読んで同意しないと次に行けないやつだな」

 ああこの律儀さはエルザさんだな。なんとなく取扱説明書を作ったのは彼女だと確信した。

 ちなみに俺は読み飛ばすタイプである。


「ここはスクロールします」

「こ、細かい文字ね。こんなのよく書いたわね」


「・・・・・・よし。同意」

 携帯電話や保険の取り扱い説明書もびっくりな長い説明の最後の同意をタッチする。


〈〈 メニュー画面

 1・この馬車について

 2・各種機能について

 3・暴走モード

 ・・・        

 ・・

 ・〉〉

 

 俺は出てきたメニュー画面を上から順番に押していくことにした・・・


 分かったことを整理すると


 まず気になるこの馬は、ウェンディの言う通り妖精のようだ。

 俺と契約しているらしい。

 動力源は俺の魔力なので、馬というより車と思ったほうがいいだろう。

 つまり、魔力が尽きたら動かなくなってしまうので、注意しろとのこと。

 食事はしないが、魔石を食べさせると変化すると書いてある。


「こわ!?どんな変化すんだよ?」

「モンスターになったりして」

「魔石ってなんだ?」

「それは魔獣を倒した時に出るわよ。ちなみに妖精にもあるわよ」


 ということは、この馬にウェンディが食われたら、変化するのだろうか?

「変なこと考えてるでしょ?」

「・・・何も考えてません」


 次に荷台のこと。

 この何の変哲もない荷台には各種機能が付いているらしい。

機能ごとの項目を見てみると・・・


〈トレーラー〉

 1・快適空間(LV・1 1/10)・・・リラックス効果。体力回復、魔力回復、状態異常回復、解呪、デコレーションなどなど


 2・悪路走破(LV・1 1/10)・・・雨の日でもラクラクです。


 3・変形機能(LV・1 1/10)・・・幌馬車になれます。


 4・収納(LV・1 1/10)・・・この荷台と馬は収納できます。邪魔なようなら収納して携帯して下さい。


「おお!結構色々すごい機能があるな!幌馬車になれるならここで寝泊まりできる」

「ねぇ。このLVって何?」

「これは多分レベルのことだ。これを上げると機能が増えるらしいぞ。しかし、どうやってレベルを上げるんだ?」

「馬に魔石を食べさせるんじゃない?」

「そうかもな」

 これは検証してみる必要がありそうだ。


「さて、次は収納だな。荷台と馬を収納して携帯できるって何だ?」

 すると、馬車が一瞬光り消えてしまった。


「なっ!消えた!どこいった!」

「ワタル!ワタル!腕見て!」

「これは・・・」

 そこには銀色の細長い腕輪が、俺の右腕にハマっていた。


「ほぉーなるほど。こうなっているのか。それじゃ〜・・・いでよ!精霊馬車」


 フッと現れる馬と荷台。


「なるほどね〜。馬車を携帯できるなんて面白いな!消えろ!いでよ!消えろ!いでよ!」

 現れては消える馬車で遊んでみる。


「もういいでしょワタル。いつまで遊んでるの?」

「そ、そうだなつい。ゴホンッ!さて最後はこいつだな」

「なんだかアピールがすごいわね」


 メニューには一際輝く「暴走モード」の文字。

 一つだけ虹色に輝いており、目立っている。

「確かにいかにも使って下さいといってるな。見てみるか」


「暴走モード」

 保有する全魔力を使い、馬車が暴走します。魔力が尽きるまで暴れまわり、すべてをなぎ倒す。私は反対したのですが、上司に逆らえず搭載しました。


「えーと永久封印で・・・」

「そうね。やっぱりモンスターになるみたいいだわ」

 こんなもの怖くて使えるか!エルザさんの嘆きの声が書いてあったし・・・






















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