鈴の一日

成瀬 比七

第1話

「あーーー!暇だわ!」

 ソファーの上でドタバタと足を上げたり下げたりする。1人の少女。とてつもない美貌の裏には元国専属の殺し屋という裏の顔を持っている。

そんな彼女は今、とてつもない暇に駆られていた。なぜなら、国から無理やり逃れてきたので、ずっとどこにいるのか探されていて、身動きが取れないからだ。もう、夏休み期間、最後の2週間はずっとこの調子だ。

「はぁ、仕方ない、本でも読むか。」

と、言ったものの、彼女の部屋にはひとつも本がない。この隠れ家は引っ越してきたばかりで、布団以外本当に何も無いのだ。彼女はそれに気づくのに時間がかかった。

「…あ、そうだった、引っ越したのよ、私。」

流石に2週間もずっと部屋の中だと頭がおかしくなったのか、気づいたのは、本を読むために、たまたま友達からもらったお菓子を、キッチンから、出してきたところだった。

そして、彼女は最終的にはこんな決断をした。

「よし!映画を見に行こう!」

彼女の友達が言っていた。近くの映画館は面白いと。しかも、よく聞くと、現地でチケットを取れると言っていた。よし、それは行くしかないと思い、深くキャップを被り、メガネをして、男の人みたいな格好をして、近所の小さな映画館に足を踏み入れた。

入ってみると、内装も素敵だったが、何より、こじんまりした感じが、彼女には合っていた。

その後、ミステリーの映画を見た。彼女はそれにどハマりした。どこが面白かったのかと言うと、ミステリーの中にでてきた、殺し屋が、派手にドンパチ殺っていたからだ。

「あの爆弾、絶対今爆発させたら目立つわよね。じゃあ、今は爆発させないわ。」

という所で爆発するものだから、裏をかいてきて、びっくりしたのだ。なんて下手なのかと。

彼女は、人を殺すのは得意だが、好きでも無い。どっちかというと、嫌いな方だ。でも、得意になってくると、あまり派手に、目立たなく殺すのが基本だ。なのに、映画の殺し屋があまりに派手なので、憧れを抱いた。私もあんな風に目立ってみたい。そう思った。

夕方になって、近くのスーパーで買い物をし、一日が終わる。少女は、あの映画について、調べたいことが沢山あったが、今はスマホを持ち合わせていない。だから、仕方なく、今日はご飯を食べて、眠ることにした。明日、学校に行って、友達にスマホを貸してもらおう。そう思った。

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鈴の一日 成瀬 比七 @sakura_tyan

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