第弐拾捌話 侵略
「王手です、サイ様」
「うぬぅ……お主、いやらしい手を打つようになったな」
「それはもうサイ様に鍛えてもらっていますので」
目の前にいる修羅が好手を指してきたので、次の一手を悩んでしまう。
軍略を学ばせる為に修羅に将棋を教えてみたが、この半年の間で随分と強くなったものだ。まあ俺は元々御屋形様の接待をするだけで、半兵衛にも勝ったことがないしそれほど強くはなかったがな。流石に織姫様には負けなかったが。
修羅が強くなったのは将棋だけではなく、この半年感で見違えるほど強くなった。将棋盤から視線を外し、鑑定眼で修羅を調べる。
『ステータス
名前・
種族・魔族(
レベル・280
スキル・【統率者】
ユニークスキル・【疾風迅雷】』
『
『【疾風迅雷】スキルとは、【雷操作】スキルが進化したスキル。魔力を雷・風属性に変換し操る能力』
『【統率者】スキルとは、【カリスマ】スキルが進化したスキル。人々を導き、戦闘時には配下の士気を上げる能力』
レベルが111から280まで上がり、種族としても一人だけハイオーガを跳んでオーガキングへと進化し、スキルも強力なユニークスキルへと進化している。
内包する魔力量も増え、剣術も覚え、軍略も学んだ。
初めは俺が魔王軍を指揮していたが、途中から修羅に指揮をしてもらっている。今ではもう皆を纏める立派な将軍になりつつあった。
「サイ様、ここなんかどうです?」
「馬鹿、口出しするなと言っているだろう」
「リズはサイ様を思ってしていますのに……」
「ふん、ご主人様はあなたが邪魔なんですよ。いいからさっさと小夜と代わりなさい」
リズにいちゃもんをつける小夜。
この二人は何も変わっていない。いつも通り俺にべたべた引っ付いてくるだけだ。
今だって、椅子に座っているリズに抱っこされている。こんな姿勢では駒を指しにくくてかなわん。
「おいガキんちょ、そんな遊びなんかしてね~でアタイと戦おうぜ」
「あ、あの……おはぎ作ったので、どうぞ」
「いただこう。命は気が利くな」
「え、えへへ……」
「おい、無視すんじゃねぇよ」
『ステータス
名前・
種族・魔族(
レベル・213
スキル・【金剛不壊】【武術】』
『
『【金剛不壊】スキルとは、常時身体が鋼のように頑丈であり、いかなる状態異常に犯されない能力』
『【武術】スキルとは、あらゆる武術を扱える能力』
『ステータス
名前・
種族・魔族(ハイオーガ)
レベル・190
スキル・【
枯葉も命もハイオーガに進化している。
クレハに関してはスキルも進化しており、新しく【武術】スキルを習得した。
これに関しては、俺が武術を教えてやり能力が昇華したのだろう
以前までは力任せの戦い方だったが、今はかなり強くなっている。頑丈な身体と合わせたら鬼に金棒といったところだろう。
命はレベル以外変わっていないが、レベルの上り幅は修羅の次に大きい。それは【巫女】スキルの恐るべき能力を知り扱えるようになったからだと思われる。
「サイ殿は引っ張りだこだな」
「それほど、皆がサイ様を慕っているということですな」
「あ、あの……おはぎとお茶をどうぞ」
「「どうもどうも」」
『ステータス
名前・
種族・魔族(ハイオーガ)
レベル・175
スキル・【明鏡止水】【鏡花水月】』
『【鏡花水月】スキルとは、対象に幻術を見せる能力』
『ステータス
名前・ボルゾイ
種族・ドワーフ(群れのボス)
レベル・62
スキル・【鍛冶】【大工】』
『【大工】スキルとは、大工に優れた能力』
水月とボルゾイ殿の老人達は若い者に比べて成長していない。
水月に至っては若い連中にレベルを抜かれてしまっている。が、レベルの差が勝敗に直結する訳ではない。
測定不能のジャガーノートにレベル200ほどだった俺が勝ったのも様々な要因を重ね合わせたからだ。
それは俺とて同じで、【鏡花水月】の存在を鑑定眼で調べる前の段階で水月と手合わせをしたら、普通に一本取られてしまった。これが実践だったら俺は死んでいただろう。
総合的な能力では若いオーガ達が上だが、実践になればまだまだ水月の方が上だ。
ボルゾイ殿が新しく【大工】スキルを習得したのは、半壊していたオーガの集落を建て直したからだろう。
今俺達が居る場所は、元々温泉があった場所を改修したものだ。大勢集まる場所なのでどうせならと、御屋形様の屋敷のような大きい建物に作り替えてもらった。
その他にも、ボルゾイ殿やダンケ達ドワーフには軍の武器などを作ってもらっている。あと自分達で米酒を作ったりしていたな……飲むと悪酔いてしまうのが厄介だが。
「タロスもサイ様を抱っこしたい」
「サイ様にはリズ様と小夜様がいるからな……」
「タロスさん、あのお二方を出し抜いてサイ様を抱っこするのは無理ですよ」
「ムフー」
『ステータス
名前・タロス
種族・魔族(
レベル・135
スキル・【
『ミノスジェネラルとは、ミノタウロスが進化した種族である』
『【牛刀割鶏】スキルとは、手加減できない変わりに膂力が増す能力』
『【威圧】スキルとは、敵を怯ませる能力』
『ステータス
名前・信玄(サイ=ゾウエンベルクが名付けた)
種族・魔族(
レベル・102
スキル・【
『【
『ステータス
名前・ゴッブ
種族・魔族(ゴブリンキング)(群れのボス)
レベル・85
スキル・【忍技】』
『【忍技】スキルとは、忍びの技を扱える能力』
ミノタウロスもミノスジェネラルに進化し、見た目がより大きく恐ろしくなった。勿論見た目だけではなく、斧術や特殊なスキルも習得しており強くなっている。
それぞれ個体が進化して少なからず外見が変わっているが、一番変わったのはアントマンだろう。
大きい蟻なだけだったキラーアントが、羽根も生え大人の人間のようになっている。種族も魔物から魔族になっているしな。
アントマンは機動力と移動速度が凄まじく、捉えるのは厄介だ。さらに凶悪なスキルも合わさると手に負えない。
正直、アントマンのスキルはその後の光景が悲惨なので余り目にしたくはない。
ゴップもゴブリンキングに進化した。
だが、俺が刀で初めて殺したゴブリンキングのように腹が出て太っている訳ではなく、細みながらも筋肉がついている理想な肉体だった。
同じ種族だが個体によって見た目は変わるのだろう。因みにゴップの仲間も全員ホブゴブリンに進化していた。
【忍技】スキルについては、俺が忍びの技を教えたから習得したのだろう。
「サイ様ー! 大変ですサイ様ー! 一大事ですぞー!」
「ええい、耳元で騒ぐなと言っているだろう!」
『ステータス
名前・ナポレオン
種族・亜人(
レベル・2』
『ステータス
名前・政宗(サイ=ゾウエンベルクが名付けた)
種族・魔族(デアウルフ)(群れのボス)
レベル・52』
哨戒していたナポレオンと政宗が戻ってきた。
この二人は特に進化している訳ではない。連携の為にいつも一緒に行動しているので、仲は良好なようだ。
五月蠅いナポレオンの相手をするのは政宗が大変だとは思うが……。
「ナポレオン、何が一大事なのだ?」
「そんなもん決まっているではありませんか! 敵ですよ!」
「哨戒中、北からアンデットの大群が押し寄せているのを目撃した。数は推定で千以上。まだ距離はあるが、すぐに呑み込まれてしまうぞ」
「北からの千のアンデット……恐らく【死霊王】の軍だな」
ナポレオンと政宗からの報告を聞いた修羅は、険しい顔を浮かべて呟く。
敵の情報を知っているみたいなので、皆に共有してもらう。
「我等の領土に隣接している領土は、三人の魔王が支配しております。その内の北に隣接している魔王が【
「ふむ、では魔王の配下が大軍を寄越してこの地を奪いに来たのだな」
「そうだと思われます。そしてファウストが新たな魔王になるつもりでしょう」
「あいつ等、今になってアタイ等に喧嘩吹っかけてきやがったのか!」
今までは何にも属していない野良の魔族や魔物を相手にしてきたが、ついに七大魔王の一角が本腰を入れて介入してきたということか。
何故この機会まで手を出してこなかったのか謎ではあるが、こちらとしては成長する時間を十分に与えてくれたので好都合ではある。
どう対応すればよいか尋ねてくる修羅に、俺は自分の考えを伝えた。
「遅かれ早かれこの日が訪れるのは承知の上。そしてこの日の為に俺もお主達も準備をしてきた。軍を作り強化し、それぞれが自らを鍛えたのだ。ならばこの難局、お主達の力で解決せねばなるまい」
「つまり、サイ様の力を我等に貸していただけないということですか」
「ああ。今後も俺が大魔境にいられるとは限らないからな」
「自分達の居場所は自分達で守る……ですね! サイ様!」
「その通りだ、ゴップ」
「いつまでもサイ様のおんぶにだっこしてもらう訳にはいきませんな」
俺の考えを伝えると、ゴップや水月から始まり、全員が納得してくれた。最初から俺を頼ってばかりではこの先に未来は無い。
敵が強大で難局であるからこそ、自分達の力だけで守り通してほしいと思う。
「わかりました、サイ様。安心してこの地を任せられるように、我等だけで乗り越えてみせます」
「うむ、その意気や良し。修羅、お主がこの軍の総大将となって皆を率いろ。いずれ魔王になるならば、それくらいやってくれるな?」
「勿論です、サイ様。皆、我についてきれくれるか!」
「「おう!!」」
修羅がこの場にいる主力達に問いかけると、修羅が総大将であることを皆が認めた。時間がないので、早速修羅が軍議を開始する。
「ナポレオンとマサムネは、今すぐ仲間を連れて亜人や魔族を後方に避難させてくれ」
「了解でありますよ!」
「承知した」
「他の者はそれぞれ配置につける。いいか、絶対にこの地を奪わせない。勝つぞ」
「「おオおオおオおオお!!!」」
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