第7話 女の子特有の良い匂い


 お風呂を入り終えた梓は脱衣所に移動する。私に裸を見られたくなかった梓は私を脱衣所の外に出した。

 やっぱり、こういうのは徐々に、が大事だ。


「……!」


 ふと、梓はかごに二種類のパジャマが置いてある事に気づいた。


 これは……?


「さくらんぼ柄のパジャマと雲の柄のパジャマしかウチには無いんです……すみません。どちらがいいですか?」


「いろはちゃんのパジャマなら、何でもいいよ! ネグリジェでも浴衣でも」


 予想外の反応に私はびっくりする。


「本当に、いいんですか?」


「うん! じゃあ、雲の柄のパジャマにするね!」


「そこはさくらんぼを選ぶんじゃないんですか?」


 さくらんぼは子供っぽい、と思われたのだろうか。でも雲は男の子っぽいし……。本当に梓には申し訳ないけど、彼女は意外と喜んでいるらしいので、気にしないことにする。


「えっ、なんで?」


「いえ、今のは忘れて下さい」


「んー、分かった」


「それより、この服たちいろはちゃんの匂いがするね」


 当たり前じゃないですか。私が着ていたのだから。


「か、嗅がないで下さい……」


「すっごい良い匂い……! くんくん」


「嗅がないで下さい」


 私は睨みつつ、脱衣所のドアを開ける。変態行為は見過ごせない。


「!」


 脱衣所にはキャミソール姿の梓がいた。パジャマの上だけまだ、着ていなかったようだ。


「これで一つまた、いろはちゃんのことを知れた気がするよ」


「どういう意味ですか? 梓お姉ちゃん」


「いろはちゃんは、良い匂いだってこと!」


「変態発言はやめて下さい」


「もっと嗅いでいい? いろはちゃんを」


 そう言い、梓は私に近づいてくるのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る