第2話 間違えたのに開き直る

 この人、誰なんだろう……と首を傾げていると、突然お姉さんはこんな主張をし始めた。


「ここは私のおうち! あなた誰? 住居侵入罪で訴えるよ!」


 それ、こっちのセリフ……。


「あのー、何か勘違いされているようなので、一度表札確認したほうがいいですよ?」


「表札っ?」


 ここはマンションで部屋の番号の下に苗字が書かれているはず。


 お姉さんは一度部屋の外に出て、表札を確認してきた。


「ほんとだ! ここ、私のおうちじゃない! でも、眠いからここで寝させて」


「玄関で寝ると風邪、引きますよ? 取り敢えず、上がって下さい」


「私のことを心配してくれるの? でも私、体調不良で会社休んだこと、無いよ?」


「そういう問題じゃ……」


 困惑する私を見て、お姉さんはひらめいたような顔をする。


「だったら、私を泊めて?」


 うーーーん……。


 迷いに迷った私は、何故かすんなり了承してしまうのでした。


「しょ、しょうがないですね。一日だけですよ?」


 その言葉を受け、お姉さんは心底安心したような笑みを浮かべた。

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